雨が降ってきそうなのに、傘を持たないで出かけるあなたのこと。
5月も半ば。寒さを感じなくなって、冷え性の私はとても嬉しい。なおかつ、花粉症の時期も過ぎたから快適なのだ。
日差しが強ければ汗ばむこともあるけれど、真夏ほどのウダウダ感はもちろんなく、この季節は本当にありがたいと思う。
今年はコロナのこともあって、手放しで春を楽しめるわけではないのだが、年間を通しての私の動きにはさほど影響していないと思っている。
というのも、全般性不安障害を経験してから、遠出することがとても怖いと感じるようになってしまったからだ。
心の中では、たまには遠くに行きたい。あんなところや、こんなところに、日帰りでもいいから行きたい。そう思うことも多い。
でも、実際にそれをやってみると、移動中の電車の中で身体が反応して、指先の震えが止まらなくなることがあるからだ。
だから、普段から旅行するといったことはなく。こんな状況になっていなかったとしても、あまり変わらない春だったかもしれないのだ。
雨が降ってきそうなのに、
傘を持たないで出かけるあなたのこと。
お昼過ぎの散歩を日課にしているが、5月に入ったぐらいから午前中に歩くことにした。午後は気温が高くなることが多くなってきたし、日差しが眩しくなってきたから。
新緑の中、娘といろいろな話をしながら1時間程度歩く。
新緑の季節とはいえ、もちろん、お天気が悪いこともある。
朝から降っていれば、中止にしたり午後に変更するのだが、「大丈夫じゃない?」みたいな時は出かけてしまう。
スマホアプリで、雨雲の様子を確認。
「これ、もう少しで降るね。」
「傘持って行ったほうがいいね。」
よくある日常の会話。
水分補給のためのボトルなんかをバッグに入れて、家を出る。
いつものお散歩コースの3分の2程度歩いたところ。
思ったより早く、雨が降ってきた。
「あれ、ポツポツしてきたね。」
「傘広げるの面倒だなぁ・・・。」
「いや、ダメだ。あっという間に、いっぱい降ってきた。」
こんなことを逐一言いながら、私はゴソゴソと自分のバッグの中を漁り、折りたたみ傘を取り出す。
風の街の中でも、より風の強い道。
折りたたみ傘が壊れそうだと思いながら両手でそれを開きながら、何か異様な気配を感じ出す。
「何ニコニコしてんの? 結構降ってきたから、傘さしたほうがいいよ。」
私がそう言うと、
「うーん。まぁねー。」
と返ってくる。
いやいや、ホントに。結構降ってきたから。
まだ家まで距離あるし。
???
ん?
あれ?
「傘持ってこなかったんだよねー。」(〃∇〃)
風の街の中でも、より風の強い道。
「密は避けましょう」のこのご時世。なぜに傘を持ってこない。あの会話は何だったんだ。
私より背の高いあなたの頭が隠れるように、風に強くしなる折りたたみ傘を必死で支える私の腕。
「マジか。信じられん。どこからそんな自信が出てくるんだか。」
私は若干キレ気味に。そして次第に可笑しくなってくる。
そうなのだ。
だいたいそうなのだ。
私が不安に押しつぶされそうな時や、心配性で胃痛腹痛を起こしがちな時でも、だいたい彼女はこんな感じなのだ。
頼りになるんだか、頼りにならないんだか、まったく判断がつかないところで生きている。そんな彼女がうらやましい。
そんな彼女を見ると、ホッとするのだ。
「密だし! 風強すぎるし! 傘壊れそうだし!」
二人で笑いながら家路に急ぐ。
朝10時前の平和なひと時は、私に気持ちの和らげ方を教えてくれる。
そう。雨の日も、悪くない。
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