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『光る君へ』 最終話 視聴感想 ※ネタバレあり

みなさん、こんにちは。
「令和源氏物語を書き下ろした私だからこそ!」
という義務感のみで、NHK大河ドラマ『光る君へ』の視聴感想と解説を掲載してまいりましたが、それも本日で最後となります。
一年あっという間でしたね。
トンデモ設定にツッコミながらも、よくぞ48話も視聴しきったと自分を褒めてあげたいです。。。
源氏物語や時代背景をよくご存知の識者の方々にすれば失笑の大河ドラマでしたね。
予算の関係で光る君の本編を映像化するのは断念、と聞きましたが、それが並行して描かれたならばもっとテンポよく、称賛されたでしょう。

ああ、ほんと、私よくがんばりました。
それが一年を通しての感想です。

さて、最終話のタイトルは「物語の先に」でした。


 賢妻・倫子さま

前回のラストで、やんわりと微笑みながら
「それで、殿とはいつからなの?」
とまひろ(吉高さん)にさらりと切り込んだ道長(柄本さん)の正妻・倫子(黒木華さん)さま。
黒木さんはどんな役を演じられてもすばらしい女優さんだとつくづく感服した場面です。
終始一貫して笑みを絶やさず、じっと人の機微を観察し、夫への献身は平安の権門の夫人たるに相応しいものでした。
そして夫がまひろに特別な感情を抱いているということをすぐに看破しましたね。そうして夫を世に繋ぎとめるためにまひろに妾になってくれと懇願するとは、懐の深いアッパレな女性です。
道長という人は実際にこの妻、そして左大臣の財力と引き立てあってこそ、立派な地位を築いたわけです。
黒木さん、一年おつかれさまでした。

 世代交代

左大臣・藤原顕光(宮川一朗太さん)が年をとり、陣の定においては居眠りをするその体たらくに辟易する公卿の面々ですが、この時代の大臣というのは自ら職を辞するまではその位から降りることはありませんでした。
しかしながら、さすがに見かねた摂政の頼道(渡邊圭祐さん)に引導を渡されてしまいます。
道長も公任(町田啓太さん)も退き、政治の中心はその子の代にシフトしてゆきました。
同じように彰子(見上愛さん)は女院と呼ばれるような地位を不動のものとして、女ながらも政事を掌握しております。
あの何事にも消極的で感情を表さなかった少女のような姫がずいぶんと変貌を遂げましたね。難しい役どころであったと思います。
世代交代といいますと、彰子に仕えるまひろの娘の賢子(南沙良さん)の変わりぶりも驚きでした。
初恋の痛手を忘れる為か、すっかり恋多き女となり、数々の浮名を流しているモヨウ。
東宮の御子である親仁親王の乳母に任命され、後に三位の大弐と呼ばれる地位に上り詰めます。
乳母というのは、乳を与えて若君を面倒見るのが通例ですので、賢子は子供を産んでいるはずです。そうなるとまひろも若く見えてもおばば様、ということですね。
ドラマではその部分は描かれておりませんでしたが、もはやトンデモ設定当たり前なので驚きもしませんでした。

 ウィカさん再登場

ききょう(ウィカさん)がまひろの家を再び訪れると、そこには後に『更級日記』を書くことになる菅原孝標女がまひろに源氏物語を読み聞かせ、独自の解釈を披露していました。
自分が作者だと名乗らないのはやはりちょっと意地悪なまひろさんですね。
清少納言と紫式部が実は昔からの友達、というのもトンデモ設定ではありましたが、最終回を迎えるにあたり、話をまとめるために登場させたのでしょう。
木で鼻を括ったような物言いに、プライドの高いウィカさんの清少納言はなかなか見どころがありました。
お疲れ様でした。

 道長逝く

かわいい娘に先立たれた道長はそれまでの糖尿病もあいまって、ついに床に伏せてしまいました。
そんな夫の命を繋ぎとめようと倫子はまひろを道長の側に呼びました。
なんともこのくだりはだらだらと、そして残酷な時間であるなぁ、というのが素直な感想です。
道長のために物語を聞かせて、「続きはまた明日」という手法はもう世を諦めている道長には酷ではないかと感じました。
そうして命をまっとうした道長に添うように藤原行成(渡辺大知さん)も同じ日に亡くなるのです。
これは実際に史実に記されております。
仲間を偲んで歌を詠む公任と斉信(金田さん)の場面は、なんとも別のところで注目されてしまいました。

 公任:見し人のなくなりゆくを聞くままに
      いとど深山ぞ寂しかりける

(昔馴染みが亡くなるという報せを聞くたびに、私が隠棲するこの深山の様子も寂しさを増すことよ)

 斉信:消え残る頭の雪を払ひつつ
      寂しき山を思ひやるかな

(頭に残ったようなこの白髪頭に降る雪を払うと、剃髪したあなたの頭がわびしく感じられる)

ここでオンエアで金田さんは「頭」を「あたま」と詠んでしまった痛恨のミステイク。。。
ネット上でザワつき、翌日の再放送では「かしら」と訂正されておりましたとな。
この歌を詠みあった場面に関しては『栄華物語』に記されております。
赤染衛門(鳳稀かなめさん)さん、しっかり役目を果たしておられますね。

 まひろ、また旅に・・・

どうにも落ち着いて居られない大石紫式部は、再び旅に出ることになりました。
その途中でまた双寿丸(伊藤健太郎さん)と行き会うのです。
彼等は戦の為に東に向かうところでした。
そして「道長様、嵐が来るわ」
の一言で完結。
これからの武士の台頭を暗示するものでしょうが、よくわからん終わり方でした。

一年視聴してまいりましたが、紫式部がどんな気持ちで源氏物語を書いていたのか、もうちょっと描かれてもよかったなぁ、と物足りなさを感じます。
ドラマの演出とはいえ、刀伊の入寇などは必要があったのか?
トンデモ設定なのですからいっそ紫式部も刀伊の人質となれば面白かった、と書かれている方もいらっしゃいましたが、まったくそのように感じます。
回収されていない疑問なども多く、なんとなくで終わった感じですね。
とりあえず「私は視聴感想をやりきった」ということで溜飲を下げることにします。
みなさま、長くお付き合いいただきましてありがとうございました。

青木 紫


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