紫がたり 令和源氏物語 第四百十七話 夕霧(二十)
夕霧(二十)
花散里の君は夜更けて夕霧が来たのを知り、やはり気になっていたこともあるので、御前に呼びました。
「今日は寒うございますわねぇ。何か温かいものを用意させましょうか」
夕霧はこの花散里の君を母と慕っているので、こうした心遣いがありがたく、さきほどまでのささくれた心が温もり、癒されるように感じます。
「いえ、大丈夫です。お母さまこそ風邪など召されませんように」
「わたくしの心配をしてくださって、お優しいこと。ところで一条の宮を小野から御身がお移しになったと聞きま