毎日の食器だから、生きている器で
私は毎日汁物を飲む。お味噌汁だったり、スープだったり。1日一杯飲むだけでカラダがポッとして落ち着くから。実家にいた頃からの習慣で、これだけは欠かせない"私の食のこだわり"のひとつ。だからこそ、これを機に器を「ずっと使いたい器」に変えてみた。
先日、冬の間に注文していた新しいお椀が自宅に届いた。初めてオーダーした「輪島塗」のお椀。漆器は昔から好きで、少しずつ集めていたけれど、お椀を買ったのは初めて。これが私の「ずっと使いたい器」だ。
開封の儀すら尊い
ちょっぴりレトロな包み紙に「特選輪島塗」とこれまたレトロなフォントで綴られたシール。いつだって新しい器を迎える時はワクワクするけれど、「特選」とか特別感のあるワードを見ると、高価な物買ったんだなあ…って実感がして、ちょっと背筋がしゃんとする。
ちなみに「輪島塗」と名乗るには、輪島市で作られていることはもちろん、木と天然漆を使い、地の粉(珪藻土)を使い、さらに伝統的な工程を経て作られた物だけが認められるそう。「輪島塗」は、いわば"輪島の職人の技術"と"輪島の大地"が詰まっている逸品だ。と、思うとこの箱すら荘厳・・・
今回、「田谷漆器店」の輪島塗を購入した。昨年、輪島に行くきっかけをくれた塗師屋さん。輪島で200年の歴史がある塗師屋さんで、今回私が購入したお椀は、創業200周年を記念した特別デザインのお椀。
日頃から陶器なども作家さんから直接購入することが多いが、関わっている人たちの顔が浮かぶ器は、より一層愛着も湧く。200周年おめでとうございます、の気持ちであえてこの記念デザインを購入した。
生きている器を五感で感じる
やっと姿を現したお椀は、「溜塗(ためぬり)」という色。うっすらと深い朱色が透ける上品なカラーは、色漆によって塗られている色味ではなく、塗り方によって作られる色味。幻想的でより一層職人さんの技術を目で見て感じられる。使えば使うほど色が変わっていくそうで、それも楽しみ。
早速、ポトフを作って器に注いでみた。今まで使っていた安物のお椀は、出来立ての汁を注ぐと熱かったのに対し、輪島塗のお椀は熱くない。ほんのりと伝わる温っとしたお椀の温度は、ちょうどいい加減のお風呂のよう。さらっとした器の表面も手馴染みが良く、滑らかな感触。
しかも何よりとっても軽い。
おそらく自宅にある器の中でも最軽量なのではないか。というくらい軽くて使いやすい。
同じく漆が塗られたお箸との相性も良く、(実は3日間連続食べ続けていた)ポトフがいつもより1.5割増くらい美味しく感じられた。今まで一人暮らしを支えてくれていた安物のお椀には申し訳ないけれど、もうあのお椀には戻れない。
いつもの毎日を一緒に豊かに
漆の器は、程よい湿気があると漆が固まっていき、器の光沢や艶の表情が変わるとか。特別な手入れは必要ないけれど、毎日使って、毎日洗うことがちょうどよく漆に水分を与え、器が生き生きする。
漆の器は生きている。毎日使って、自分だけの器へと育てたい。
そんなことを考えると、毎日が少し豊かに感じる。こんな毎日だから、最近はそんなことばかり考えている。
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