見出し画像

オンデマ少部数で文庫のカバー付き同人誌を出したい人向け印刷所メモ

初めまして。装丁が大好きな同人オタクの由狩と申します。
ツイッターで文庫が刷れる同人誌印刷所さんの話をしたら、フォロー外の方から少し反応を頂いたので、もしかしたらこのメモが誰かの役に立つのかもしれない、と思いまとめを作ってみることにしました。

この記事で書きたいことは、それぞれの印刷所さんを使ってみて感じたこと、それぞれの長所です。
同人誌というのは、作者がひたすらにこだわって作ることができる面白い趣味だと思っています。人によってこだわる場所は様々です。
・安さ、コスパ
・印刷の綺麗さ
・オプションの豊富さ
・選べる紙の種類
・締め切りの早さ
・サイトUIの使いやすさ

などなど、何を優先するかによって向いている印刷所さんは変わると思います。「その人に最適」な印刷所さんはあれど、「誰にでも最良」の印刷所さんはないものと思っています。

そして、今回書くのは「私が使ってみて感じたことメモ」なので、すごく有名だけど私は使ったことないなぁ、というところの描写がふわっとします。ごめんなさい。
あと、今回の私の体験談は「部数が少なめの文字書き」向けの要素が強いです。そのため、同じ印刷所さんの中でも部数が増えるとプランが変わってくるかなと思います。よろしくお願いします。

今回挙げる印刷所さん
使ったことがあるところ
・ねこのしっぽさん
・BRO'S(ブロス)さん
・コミック応援.comさん(株式会社HANAMIさん)
・番外編:印刷通販ちょいのまさんとプリントオンさん
使ったことがないけど噂には聞いているところ
・コミックモールさん
・STAR BOOKS(スターブックス)さん
・しまや出版さん
・ちょ古っ都製本工房さん(2021/10/24修正しました!ごめんなさい!)
記事公開後に情報を頂いたところ(2021/10/17追記)
・くりえい社さん
・RED TRAINさん(OneBooksさん)

見積もり基本仕様

・文庫(A6)サイズ
・本文100P(表紙込み104P)
・カバー付き
・カバーをかけるため本体表紙は1色スミ刷り
・本文表紙加工なし、カバークリアPP加工
・部数は最小部数を記載

それでは本文に参ります。


ねこのしっぽさん

文庫と新書のフルセット、という専用セットがあります。
オンデマンド(カバー、表紙)×オンデマンド(本文)が一番安く少部数(10部)から対応してもらえるセットですが、オンデマンド(カバー、表紙)×オフセット(本文)のプランもあります。こちらは50部から。

オンデマンド(カバー、表紙)×オンデマンド(本文)で見積もりを出すと、10部で22,400円。早割のオフ率は10%。

ねこのしっぽさんのセットの特徴は、基本セットの中にしおりが含まれる点かな。もちろんなしも選択できますが、ちょっとお得感がある。
ちなみに表紙用紙はホワイトポスト(180kg)、本文用紙はラフクリーム(文庫用紙)一択になります。紙変えはカバーのみ対応中。
上記の通り本文のみオフセットが少部数から使えるので、本文の読みやすさにこだわりたい! という方にいいかも。
カバーはスジ加工がデフォルトで巻きやすい。ただし巻き加工は別途お金がかかるのと、締め切りがめちゃくちゃ早まるので自分で巻く方がお得。

ねこのしっぽさんは電話対応が丁寧というのをよく聞きます。あと、サイト内Q&Aがすごく豊富。専用セットもあるので、初めて刷るのにいいかもしれない。


BRO'Sさん

ブロスさんは、文庫専用のセットがありません。そのため、A5以下のサイズで値段を計算します。カバーもオプションで選択です。

オンデマンド表紙1色刷り×オンデマンド本文+フルカラーカバーで見積もりを出すと、10部で26,680円。早割のオフ率はオンデマの場合本体部分につき最大20%。

ブロスさんで一番多く本の種類を出していたので、ちょっと肩入れしてるかもしれない。個人の感想です!

長所としては、
・巻き加工で追加料金がかからない(ただし締め切りはもちろん早まる)
・スピン紐(しおり紐)や小口染めなどの加工ができる
・本文用紙が豊富
・製本がめちゃくちゃ綺麗
・(よく聞くのは)締め切りがほかに比べて遅め
あたりでしょうか。特におすすめなのはスピン紐と本文用紙の豊富さです。詳しくはサイトを見てくれ。そして自動見積もりで沼ってくれ。

(ちょっと脱線)ブロスさんで扱ってるおすすめ本文用紙について
美弾紙ノヴェルズ
→紙が厚めで軽い嵩高紙。何がいいかというと、軽いのでずっと手に持っていても疲れづらく、ページ数が少なめでも背幅が出て「本だ~!」って感じられる。みんな物理の本の力で推しを主張しよう。
淡クリームキンマリ62㎏
→キンマリ自体はメジャー用紙ですが、大体90kgか72.5㎏までが多い(数字が少ないほど薄いと思ってください)。しかしブロスさんでは62kgが選べる。薄いとページが異常に増えてもぶ厚くならず、読みやすい本になる。文字数が嵩む字書きの強い味方。

あと、ブロスさんの段ボール、すごく丈夫なんだ。搬入搬出の時に年単位で使えるぞ。


コミック応援.comさん

あんまりメジャーじゃないかもですが、カバー付きセットのコスパ最強だと思っています。コミック応援ってサイト名だけど明らかに文庫に強すぎる。

オンデマンドのカバー(クリアPP)付き文庫、見積もると10部で21,461円。
イベント合わせの場合超早割まである。試しにエアブーの超早割だと17,168円。わあ。

とにかくコスパ最強で、手ごろなお値段で綺麗な商業ラインっぽい装丁の本を出したいならおすすめ。
本文用紙も、小説向きのクリーム色系用紙がたくさん選べる。ニス厚盛り加工があったり、商業ラノベっぽくできる口絵加工や帯オプションとかもある。
ただ、見積もり上カバーのクリアPP加工と箔押し加工がトレードオフなのかな。装丁は沼。

カバー巻きについては、前使った時はデフォで巻いてあったと思う。ちょっと何年か前の記憶なので違ったらごめんなさい。


番外編:印刷通販ちょいのまさん+プリントオンさん

今まで1社で完結するセットの話してたのに急に話変わります。

印刷通販の会社さん。同人誌の印刷所さんというよりは、テレビCMで見るプリントパックさんみたいな、個人で使える印刷所さんというイメージ。
ちょっと見積もりを試してみてほしい。やばい(誉め言葉)。
カバーのことは一旦忘れて、
オンデマモノクロ表紙(上質紙135)×オンデマ本文モノクロ(淡クリームキンマリ62kg)×104P×1冊=1,520円。

???

印刷通販さんだからか、最低部数が1冊です。1冊単位で増やせます。
試しに10冊にしてみましょう。

3,317円。

???

安すぎて不安になる。
Q.印刷のクオリティは?
A.オンデマだなって感じの画像部分のベタテカリはあるけど、小説本文ではほとんど気にならない。文字などの細い線は綺麗。扉絵とかの画像はベタの有無に左右されると思う。

Q.成人向けは大丈夫?
A.R18絵が入るとダメ(表紙、挿絵アウト)。でも小説は大丈夫。

Q.気になることは?
A.製本の仕様なのか、小口がちょっと波打つ感じがある。10P単位くらいで紙がまとまっている感じ。でも、本を読むのには支障なし。

Q.締め切りの設定がないんだけど?
A.校了から営業日カウントで送られてくるタイプだから締め切りはない。自分で余裕を持ってスケジュール立てられる人向け。

本を出したい……でも印刷所に頼むとお金かかるんだよなぁ……頒布するほど刷るつもりもないし……って人は一回見積もりを試してみてほしい。
ただし、テンプレートがこの記事を書いている時点でなかったり、納期が特殊だったり、どちらかというと一般の文集とかを刷る一般人向けの色彩が濃いので、データの扱いとかには慣れた人の方が楽だと思う。

で、最近私がやってる技として、ちょいのまさんで本体を刷り、浮いた資金でプリントオンさんのブックカバーの加工を盛る、というのを試しています。


とにかく加工が豊富なことで有名なプリントオンさん。もちろん本体も加工モリモリでまるごとプリントオンさんに頼むのも楽しいと思う。
あと、表紙の装丁を丸投げ出来るセットがあるので、プロの装丁技術を楽しみたい人にとっては唯一無二の印刷所さんじゃないかなと。

その中で、ブックカバーのみの注文ができます。
文庫本のブックカバー、クリアPPが標準装備で10部6,500円。
ここにどんどん加工を盛るのです。箔、ホロ箔、浮き出し、デボス、カッティング、レース……。

装丁が好きな人は、特殊加工のページ見てるだけで1日が潰れると思う。
ただし、プリントオンさんは締め切りがめっちゃ早いです。オプションを盛る度にまた、どんどん締め切りが早まっていきます。良い子入稿できるのが前提なので、死ぬ気でスケジュール管理を頑張ろう。


おまけ:使ったことないけど噂には聞いてる文庫に強い印刷所さん

コミックモールさん

少部数の厚い本を出す人には超有名らしい。厚い本のコスパが良すぎる。
見積もりでは、本体が100P(表紙込み104P)で9,000円。+カバーが1冊あたり150円。安い。
ツイッターなどの検索で、実際に本を出した人の口コミが多く聞けるので、すごく参考になると思う。鈍器本で概念的に殴っていこう。


STAR BOOKSさん

オンデマンドノベルズセットでカバー付き文庫本を刷れる。
見積もりをすると、10冊で26,423円。
でも、スタブさんの特徴は1日ごとの「毎割」と「豊富すぎる加工」にあるかと思います。

毎割とは、1日締め切りが早まるごとにどんどん安くなっていくスタブさん独自のシステムです。最大60日!? 17,123円!? まじで!?
入稿は予約制のようで、まず予約で自分を追い詰め、コツコツとスケジュールを進められる人向けかな。
小口染めなんかのオプションがあったり、箔押しの種類がものすごく豊富だったり……装丁好きとしてはうっとりしちゃいます。


しまや出版さん

小説書きのメッカと呼ばれるしまや出版さん。
見積もりをすると、10部で30,840円。早割10%オフあり。
ちょっとお高めなので私は手が出なかったのですが、文芸セットのページは小説同人誌を作りたいなら読んでおいて絶対損はないです。

そもそも小説本のデータってどうやって作るの? という同人誌ビギナーに優しく答えてくれるデータ作成Q&A、福利厚生があまりにも手厚い。

Word用のテンプレート配布まである。
本文はなんとかなるかもしれないけど、表紙デザインなんて無理! という方にも、既にあるデザインを使える豊富なセミオーダーデザインに、プロの手によるオリジナルフルオーダーデザインまである。やばい。


ちょ古っ都製本工房さん

ちょこっと刷りたい少部数同人作家の強すぎる味方、ちょ古っ都製本工房さん。
下手すると自分でコピー本作るより安い。
文庫本のセットはないので、本体のみ、A5以下のサイズで見積もり。

100P×5冊=1,810円

??????

自分の為に、記念に本を刷りたい、なんて時にも大変重宝すると思います。
成人向けの絵が含まれるとアウトらしいので、小説向きなのかな?
値段に対する印刷の綺麗さ、コスパが良すぎて心配になる。

本を出したい! でも需要は私にしかない! そんな欲求に駆られても、ちょ古っ都さんが居てくれる。ありがとう。


情報を頂いてよさそうなところ(2021/10/17追記)
ツイッターでこの記事を読んだ方から情報提供を頂きました!
私の知らない素敵な印刷所さん、きっとすごくたくさんあると思います。
頂いた情報の全てを記載することは難しいと思いますが、見てみて「いいな~」と思ったら追記することがあるかもしれません。

くりえい社さん

ふるすぺっくオンデマンドセットを教えていただきました。
これすごいですね。本体+ブックカバーだけじゃなくて、帯まで基本料金に込み。しかもカバー巻き、帯巻きがデフォルトのようだ。
試しに見積もりを出すと、104P×10冊で22,717円。お手頃過ぎない!? しかも30%の早割効かせると15,902円。すごい。

個人的に、見積もりやサイトUIが使いやすいのも◎だと思います。

帯、付けるとめちゃくちゃテンション上がりますよ! 口絵オプションも対応。本格的なラノベが気軽に出せちゃう。
個人的に、表紙用紙に色上質で何色か選べるのもいいなぁ。商業の文庫っぽさが増す気がする。


RED TRAINさん

料金システムが面白い。1冊あたりの金額は固定で、何冊刷っても1冊あたりの値段が変わらない。また、モノクロでもカラーでも金額が同じ。すごく珍しい仕様だと思う。
OneBooksの仕様としては、基本仕様の中にカバーと帯が込み。試しに見積もりを出すと、本文100P×1冊(カバー、帯込み)で655円。+送料で1,650円。10冊だと6,550円+送料1,650円ですね。……マジ!?

フルカラーや帯が可能なのと、本文や表紙用紙が豊富なのとで、装丁の幅はものすごく広がりそうです。嵩高紙やクラフト紙がいっぱいだ。

注意点としては、予約が必須な点でしょうか。あと、1~4部の場合は納期がとても長くなるみたい。ですが、このお値段と仕様で極少部数刷れるなら待つ価値はありそう。

Q&Aにて「どうしてこんなに安いの……?」に対して「校正などの工程を省略することで簡略化した」との回答があるので、「完全データの入稿」が必須です。解像度やページミスなどは自己責任になるので、見直しは入念に……。


まとめ

つらつらと書いてきましたが、それぞれの印刷所さんにそれぞれの持ち味があります。
何を優先するか、何にこだわりたいかは作家さんそれぞれで全く違うと思います。なので、最適はあっても最良はないんですね、きっと。
自分用のまとめメモではありますが、本を出したい誰かの助けになると嬉しいです。


更新履歴
2021/10/17 情報提供いただいた2社を記載。
2021/10/18 細かい誤字を修正。
2021/10/20 タイトルに「印刷所」を追加。
2021/10/24 ちょ古っ都製本工房さんのお名前を間違えていた! 大変失礼しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?