見出し画像

Materials Informaticsの研究を支えてくれるWEBエンジニアを募集しています

私、桂ゆかり(東京大学/物質・材料研究機構)が研究代表者を務める研究プロジェクト「CREST NX:新規結晶の大規模探索に基づく革新的機能材料の開発」では、Materials Informaticsと大規模合成実験を組み合わせることで、新物質を探索する研究に取り組んでいます。

特に力を入れているのは、物性研究とWeb技術を融合させることで、新しい研究スタイルを作り出すことです。そんな私達の研究プロジェクトをWeb技術で支えてくれる、Webエンジニア2名を募集しています。

Webエンジニア1(つくば勤務)
勤務地:(国研)物質・材料研究機構 並木地区(TXつくば駅バス15分)
業務内容:データベース、機械学習などを使ったWebアプリの開発

Webエンジニア2(中野勤務)
勤務地:明治大学 先端数理科学インスティテュート(JR中野駅徒歩10分)
業務内容:Three.jsを使った結晶構造解析Webアプリの開発

共通事項
条件:JavaScriptを用いたWeb開発ができること(学歴不問)
勤務:週3〜5日(応相談)
月収:40万円前後(応相談)
交通費:支給
賞与:なし
任期:2020年12月〜2022年3月(着任日の後ろ倒しも可能です)
博士号をお持ちの方は、博士研究員としての採用となります。

納期に追われたり仕様書に囚われることなく、じっくりとクリエイティブに開発に取り組める環境となっています。残業なし、土日休み保証で、急な休みや時短勤務にも対応できます。在宅勤務などにつきましては、各所属機関の定めるルールに基づく形となります。

正式な応募方法は、各所属機関が定める応募方法に従うことになりますので、後ほどご案内します。

「Web開発の研究者」というキャリア

研究室はイノベーションを生み出す少数精鋭のチームです。雰囲気は、小規模なベンチャー企業に似ています。ただし仕事の目的は売上ではなく「人の役に立つこと」。そして「世界で初めて何かを成し遂げること」です。

大学や研究機関の「研究者」としてWeb開発をするというのは、まだあまり一般的な選択肢ではないかもしれません。ですが、トップレベルの研究者たちと対等に意見を出し合いながら、知識と発想力を生かして、新しいものをじっくり自由に作り込んでいく環境に魅力を感じていただけたらと思います。

MATERIALS INFORMATICSとは

私たちは「物性科学」や「材料科学」と呼ばれる分野で研究をしています。これは、物性物理・無機化学・材料工学にまたがる巨大な研究分野です。元素の周期表に載っている、いろいろな元素を混ぜ合わせて加熱することで、「結晶」を合成します。結晶の中では、原子が規則正しく整列しているのですが、その並び方(結晶構造)によって電子の振る舞いが変わるので、いろいろな機能材料が生まれてきます。

身近な機能材料としては、磁石や太陽電池、LEDなどがあります。リチウムイオン電池や、リニアモーターカーなどに使う超伝導材料や、光で汚れを分解する光触媒、排気ガスを浄化する触媒など、いろいろな材料があります。私が主に研究している熱電材料は、電流を流すと片面を冷却できたり、温度差を与えると電気を作り出したりできる材料で、環境に優しい新しい発電方法として期待されています。

最近の物性科学の分野では、データ科学を活用する試みが少しずつ始まっています。たとえば、第一原理計算と呼ばれるシミュレーション技術で数万件の計算データを作り出して、それを機械学習することで新しい法則を探す研究などが行われています。昔ながらの研究方法では何十年もかかってしまう材料開発を、データを俯瞰できるようにすることで、高速化するのです。

このような研究は、Materials Informatics (MI)と呼ばれています。MIの研究を進めることで、どうしたら優れた機能材料を開発できるのか、わかるようになりたいです。そして、その技術をたくさんの研究者・開発者に使っていただきたいです。そのためには使いやすいWebシステムが必要です。その開発に一緒に取り組んでくれるWebエンジニアさんたちを探しています。

私達の開発実績: Starrydata webシステム

私達がこれまで開発してきたWebシステムとして、Starrydata webシステムを紹介します。

これは、論文中にグラフとして載っている実験データを集めて、実験データのオープンデータベースを作るWebシステムです。下の図で説明するように、論文からデータだけを抜き出して、共有します。誰でもデータを追加して、誰でも全てのデータをダウンロードできる仕組みです。

Starrydataの詳しい説明はこちらです。https://starrydataproject.wordpress.com/

画像1

画像: Y. Katsura, M. Kumagai et al., Sci. Tech. Adv. Mater. 20 (2019) 511-520.

Starrydataは2020年9月現在、約6,000本の論文から集めた、約35,000試料について、100,000本以上のカーブを収録しています。熱電材料についてはすでに世界最大の実験データのデータベースで、それまでのデータベースの100倍以上の試料を掲載しており、国内外での共同研究が多数進んでおります。これからは、磁石や圧電材料など、いろいろな機能材料のデータを集めていきます。

ちなみによく誤解されるのですが、データ収集は自動プログラムで行ったのではありません。データを効率的に集めるためのユーザーインターフェイス(UI)を設計して、数名のデータ収集者がコツコツとデータを集めることで、大規模データを収集しました。

論文を読む作業にはとても高度な読解力・洞察力・想像力が必要で、現在のAI技術では難しいです。完全自動プログラムの開発をしている研究者は国内外にいましたが、その開発の間に、人の手できちんと論文を読みながらデータを集めた方が早いはずだと思いました。そして5年近く経過しましたが、ここまで多くの実験データを集めたチームは世界のどこにも現れていません。やはり、UI設計という独自のアプローチが、論文からの実験データの収集には一番有効だったのだと思っています。(もちろん私達のUIにもまだ使いにくいところがたくさんあって、これから改善していかないといけない課題だと感じています。)

Webエンジニアさんにお願いしたい業務内容

Webの技術で、物性研究を効率化する新しいツールを世界に送り出す。そんな夢の実現のために、私たちの研究チームに協力していただけるWebエンジニアさんを2名、募集します。

任期は1年強と短いので、それでもよいと了承していただける方でお願いします。物性科学の知識については、ほとんどなくても構いません。もしかすると初心者の方が、他の初心者にもわかりやすいWebサイトを設計できるかもしれないからです。

後日、各研究機関から正式な公募情報を掲載させていただく予定なので、正式な応募窓口はそちらとなります。それまでの期間、興味を持っていただける方がおりましたら、お早めにコンタクトいただけますと嬉しいです。

Webエンジニア1(つくば勤務)

Materials Informaticsのためのプログラムやツール、データベースを、使いやすいWebアプリとして実装していくお仕事をお願いします。

私達は、何万種類もの元素の組み合わせから、新しい物質ができそうかどうかや、それらの特性を予測する機械学習プログラムの開発に取組んでいます。それらを改良して、GUIで使えるようにするための、お手伝いをお願いします。そのほか、物性研究に役立ついろんなミニアプリを一緒にどんどん企画して、作って公開していくことをお願いしたいです。

スキルとして、JavaScriptとPython, フロントエンドのUI設計, 簡単なデータベース入出力ができると助かります。新しいスキルの勉強でも楽しみながら取り組める方であれば、未経験の技術があっても構いません。

上で紹介したStarrydata webシステムをもっと使いやすくして多くの人に使ってもらうためのお手伝いもしていただけたら嬉しいです。Starrydataでは、Django, MongoDB, vue.jsなどを利用して作っています。熊谷と協力して、Starrydataをもっと世界に広げていくお手伝いをしていきたいと思っています。

ゆくゆくは、物性科学の研究に役立つノウハウを満載した、大きな情報プラットフォームを作りたいと考えています。インターネット上にばらばらに存在する物性研究のノウハウや、便利な解析ツール(自分たちで開発したミニアプリを含む)を一箇所に集めることで、物性研究者が一日の初めにアクセスするのがうちのサイトになるようにしたいです。そしてユーザーを増やし、広告料で運営できる独立なメディアになれたらと考えています。興味がありましたら、こちらのプロジェクトにも関わっていただけたら嬉しいです。

勤務地はつくばにある物質・材料研究機構(NIMS)という、国立の研究所です。Materials Informaticsの分野で日本をリードしており、材料科学のデータベース事業における日本のトップです。(桂は2020年11月に、この材料データベースグループの主任研究員に着任する予定となっております。東大での特任助教との兼務となります。)

つくばの閑静な街並みに佇む新しい研究棟で、桂と熊谷(Web接続)と協力しながら、Web開発に取組んでいただける方を探しています。こちらの指示に従ってくれる方というよりは、対等な立場で一緒に実現方法を考えてくださる方、この仕事を通して実現したいものがある方を歓迎いたします。上記の仕事の幅に収まらない提案も大歓迎なので、新しいアイディアがありましたらどんどん提案してください。

勤務地はこちらです。
(国研)物質・材料研究機構 統合型物質・材料研究拠点(MaDIS)
https://www.nims.go.jp/MaDIS/index.html

Webエンジニア2(中野勤務)

物質の結晶構造を3Dで表示・編集できるようにするWebアプリの開発に取組んでいただけるWebエンジニアさんを募集しています。

すべての物質は原子で作られていますが、その原子の並び方を表すのが「結晶構造」です。単純な並び方もあれば複雑な並び方もあり、「無機物」と呼ばれるものの多くは規則的な周期構造になっています。

ただ、原子がどんな並び方をするのかを予測する技術が、未だ確立していません。そこで、Materials Informaticsを使って、並び方についてパズルのように考えながら考察できるアプリを作ることが、研究の大きな進歩につながると考えています。

必要なスキルはJavaScriptです。開発の過程でWebGL, Three.jsなどの3D表示ライブラリを使っていただきます。使う形状は球や三角形など非常にシンプルなものばかりなので、未経験でも勉強しながら対応出来ると思います。将来、より複雑な形状の3Dアプリ開発について学びたい方が、これらの業務経験を積むために取り組む課題としてもおすすめです。

詳細についてはこちらの動画をご覧ください(音声なし)。

スクリーンショット 2020-09-18 10.28.14

東京の町並みを見下ろす明治大学中野キャンパスのきれいな研究室で、応用数学の研究者である秋山正和とともに開発に取組んでいただきます。2週間に1度、プロジェクトメンバーとのWeb会議で進捗を報告する形で、開発を進めていきます。

勤務地はこちらです。
明治大学中野キャンパスhttps://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/nakano/access.html

メンバー紹介

Starrydataの開発は、私(桂ゆかり)と熊谷将也の2名が中心となって行ってきました。UIやデータ構造を桂と熊谷で一緒に考え、桂がプロジェクトマネジメントと対外的な交渉、熊谷がコーディングを担当しました。2015年の10月に共同研究を開始し、現在のバージョンの開発を始めたのが2017年6月、運用開始が2017年12月でした。熊谷のこれまでの経歴と開発内容、将来構想については、熊谷へのインタビュー記事がASKII.jpに掲載されておりますので、よかったら読んでください。

また、本研究プロジェクト(CREST NX)の全体のメンバー紹介が以下になります。全国の大学(東京大学・明治大学・東北大学・北海道大学・大阪大学)に所属する5名のグループリーダーが中心となって、Web会議とSlackでつながりながら楽しく研究しています。特徴は、よくしゃべる研究者が多いことです。にぎやかに研究の話に花を咲かせることができる、楽しい研究チームとなっています。

メッセージ

Webの世界の魅力は、世界中のたくさんの人を巻き込むことができることだと思っています。人の心に伝わるUIを設計して、Webの向こうの人達が欲しがっているものを、私たちが無償で提供していきます。するとそのコンテンツの充実のために、少しずつでも協力してくれる人が出てきます。そんな人の数が増えていくことで、個人での研究では決して実現できない未来が実現できると感じています。

もしご興味を持っていただけましたら、ぜひ桂までご連絡をいただけましたら幸いです。現在考えているプロジェクトの詳細な説明をさせていただきます。そしてご希望があれば、後日、面接の日程をアレンジさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

桂 ゆかり
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 物質系専攻 助教
(国研)物質・材料研究機構 統合型物質・材料研究拠点 NIMS特別研究員
(国研)理化学研究所 革新知能統合研究センター 客員研究員
JST-CREST 「実験と理論・計算・データ科学を融合した材料開発の革新」2019年度採択課題「新規結晶の大規模探索に基づく革新的機能材料の開発」研究代表者
Email:katsura (at) g.ecc.u-tokyo.ac.jp
Website: https://sites.google.com/site/yukarisearch/ 
Twitter: https://twitter.com/nezdenmama



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?