アンドロメダのリミト 6話
リミトが地球に滞在してから、何日か過ぎました。
相変わらず優しくしてくれる青年と、微笑みながら話しかけてくれるお母さん。
時々、医者の様な人が来てくれます。
シャーマンのような、
良くわからないけど、まじないのような事もしていきます。
(アンドロメダの学校の授業で、こんな感じの事を習ったような気もしましたが、、、何をしているのか、リミトにはさっぱりわかりません)
その頃には、体からワープゾーンの湖の保護膜はすっかりなくなっていたので、
リミトは、ツルツルの陶器のような肌から、
陶器の素焼きのような、サラサラの肌になっていました。
美しい異国の人。といった感じです。
アンドロメダとの連絡手段もなく、体の力も出なくなってしまい、
リミトが頼れるのは、青年とお母さんだけでした。
青年は、名前を「セイ」と言いました。
何度も説明してくれたので
わかりました。
お母さんの名前はわかりませんでした。
リミトの名前は伝えることができません。名前がないと、不便だろう、、という事で、
セイが名前をつけてくれました。
「雪のように白いからユキだな」
リミトもお母さんも気に入ったので、二人とも笑顔で顔を見合わせました。
穏やかな時間が、悲しみを癒してくれました。
何日か過ぎ、セイの母親は体調が良くなり、出掛けていきました。
少し心配でしたが、母親の足取りはしっかりしていました。
お母さんは夜になっても帰ってきませんでしたが、心配はいらないようでした。
セイと二人、穏やかな時間を過ごしました。
その日の夜、
「嫁になってほしい」
とセイに言われました。
ですが、リミトには言葉がわかりません。
でも真剣な表情と、お互いの胸の高鳴りで、何となくわかったような気がしました。
リミトは、アンドロメダの事を考えました。
毎晩ルカの事を考えながら、寝ています。
胸が高鳴るほど、ルカの事を思って切なくなるのです。
リミトがいつも涙を流しながら寝ていることを、セイは知っていました。
悲しい顔になったリミトを、セイはそっと抱き締めました。
そして、セイはリミトに、優しくキスをしました。
リミトの、もともと弱って動けない体が、キスをされたことで完全に動けなくなってしまいました。
ドキドキして、死にそうです。
アンドロメダでは、ドキドキすることなんてありませんから、生命的な非常事態でした。
アンドロメダでは、体の交わりは、儀式的なもので、選ばれた人しか行わないし、とても長寿なので、遺伝子的に、子孫を沢山残そうとしないようになっていて、どちからというと、限られた人が行う、安心した感じの、安定した、ヒーリング的な感じです。チャクラとチャクラが合わさってパワーアップ的な感じの儀式で、
本能は確かに必要かもしれないですが、ドキドキとか性欲とか、止められないとか、そんなことは一切ありません。
そして、、、。
リミトは、初めて、地球人と結ばれ、とても満たされた気持ちになりました。
とても安心した、暖かい気持ちでした。
まもなく、お腹に子供を授かりました。
セイとお母さんはとても喜びました。
リミトは自分の体力が心配でしたが、もしかしたら、、、、もし産まれたら、、、。
と思うと、幸せな気持ちになりました。
その頃ルカは
アンドロメダ銀河の静かな、誰もいない場所で、リミトの事を考えながら、座っていました。
白い空間に、白いレンガが積んであるようなところがあって、座れそうな高さのレンガの段がずーっと見えなくなるまで続いています
ルカはそこにポツンと座って、ボーッとしたり、落ち込んだり、泣いたり、怒ったり、
情緒不安定です。
アンドロメダらしくない姿を、誰にも見せたくなくて、一人で、その場所で、リミトの事を考えていました。
ルカもまた、リミトと同じく地球に沢山触れたことで、色々な感情が生まれていました。
でもこの苦しみも、アンダロメダにいれば、あと数時間したら消えて、落ち着く事は知っていました。
ルカは忘れたくありません。
落ち着いて考えたくありません。
時間がたってしまえば、リミトがあの日いなくなった。ルカはとても悲しかった。という出来事だけが残ります。苦しい感情が消えてしまうのです。
あの時、アンダロメダに帰ってから、すぐに大勢で話し合いが行われましたが、これはアンダロメダ全体の問題であって、
ルカはしばらくの間、他の銀河には行かず、アンドロメダにいるようにと言われました。
穏やかでいるようにと、言われました。
ルカは穏やかになっていくことが苦しくて、一人で、
誰にも見られない場所で、
意識を自分とリトだけに向けて、
大切な苦しい気持ちを忘れないようにしていました。
アンドロメダにいることで、ヒーリングされて、大切な友達との悲しい、苦しい気持ちを忘れてしまう。リミトがどこにいるかもまだわからないのに、、、
ルカは涙が止まらず、リミトの名前を呼びながら泣き続けました。
しかし、時が過ぎて、
涙は自然と止まり、
苦しかった胸の痛みも楽になり、
ルカは微笑むことができます。
リトの事を忘れたわけではありません。覚えているのですが、
ヒーリングされて、苦しみから解放されました。
アンドロメダには、地球人ほど豊かな感情はありません。
いえ、地球人よりも遥かに豊かなので、感情に左右されて苦しむ事がないのです。
ルカは、もとの生活に戻りました。
アンドロメダの、美しく、満たされた生活に戻りました。
もう、混沌の湖には行きません。
友人に誘われたりしますが、断ります。
あの場所を思い出すと、なぜか少し苦しいのです。
なぜなのかは、もうわかりません。
リミトの事を忘れたわけではありませんが、
リミトが地球でいなくなったことも覚えています。
混沌の湖のワープゾーンを使って、一緒に沢山旅をして遊んだことも覚えています。
ゆらゆらと美しく光るワープゾーンを見ると、涙が勝手に出てくるのは、なぜなのかを、苦しい感情を、もう、思い出すことはありませんでした。
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