翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その11
ガットマン来日の続きです。
...実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。
(11) スノーマン
【声が…】
2016年10月16日に東京の神田で開催の「中国・核の脅威」シンポジウムの前日のことだった。喉が痛くなった。声がでない。
これは深刻だ。通訳者と翻訳者の違いを痛感した。どんなに資料を翻訳して準備しても、当日、ガットマンのスピーチをその場で日本語で伝えなければ、わざわざガットマンが来日した意味がない。飴玉をなめたか、うがいをしたか、よく覚えていないが、なんとか声が出るようになり、当日は乗り切った。
しかし、ガットマンのスピーチの通訳には、私自身限界を感じていた。私の海外生活はイギリスにどっぷりなので、(日本人としては珍しく)アメリカ英語がよくわからない。特に早口でまくしあげられるとお手上げ。ガットマンには「スピーチ原稿の読み上げ以外、アドリブ禁止」をお願いした。途中で何か加えられそうになったが、私がたじろいだのを見て取り、また原稿に戻ってくれた。
【市議会議員さんたち】
シンポジウムの翌日、参議院議員会館の一室で、とある政治塾に所属されている市議会議員さんたちの会合が設けられ、ガットマンのスピーチも会合の一部となった。参加者は20名くらいだったかと思う。会合全体の時間は1時間半から2時間くらいだったろうか。
会合の始まる直前に、ガットマンが「自分のスピーチは重要ではない。参加者一人ひとりが自分の意見を発言すべきだ」と言い出し、「逐次通訳は時間を取るので、同時の読み上げ通訳にする」と指示を出した。ガットマンが英語で話すのと同時に私がマイクを持って日本語を読み上げる。聞いている方はクラクラしたと思う。
しかし、彼の思わく通り、日本人の不気味な沈黙はなく、一人ひとりが発言した。ウイグルの支持者、法輪功の関係者の方も参加していて、市議会議員さんのほうから「法輪功ってなんだかよくわからないんですが」「日本人の法輪功学習者も犠牲になってるんですか」など、この機会ならではの質問も出た。(日本人は犠牲にはなっていないという回答だった。)
会合が終わって、廊下でガットマンを皆がねぎらっているとき、市議会議員さんたちのやる気が伝わってきた。「ガットマンさん、日本全国行脚できますよ」と提案される議員さんもいた。
【世界の中の日本】
ガットマン来日は、私にとって大きかった。すでに2016年の〈更新版〉を世界各地で報告していたため、カナダの状況、オーストラリアの状況などを手に取るように教えてくれた。日本や英国だけでなく、視野が一気に広がった。英国のクリスマスシーズンの定番アニメ『スノーマン』の少年になった気がした(「スノーマン」も「マン」がつくので、「バットマン」同様、「ガットマン」と重なるか)。
あまり知られることのないガットマン訪日だったが、このスノーマンから直接マフラーを受け取った人が、日本国内に数名いる。
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