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翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その24

社会のしがらみなく、迫害や臓器収奪が悪いと素直に言えるようになるには正しいことの基本が必要…そんな観点からフツーのことを綴ってみました。

【足湯】

数年前のこと。マタス弁護士のアテンドの数日間、実家からのホテル通いがちょっと不便だったので、山手線沿線の都心のホテルからさほど遠くないところに住んでいる知人の家に泊めてもらった。

「娘も息子も独立したから部屋空いてるよ」ということで、図々しくお邪魔させてもらった。臓器収奪問題を心から憂いているご夫婦で、私のしていることを支援してくださる形だった。

いわゆる高級マンションで、英国の田舎から来た者にとっては、ボタン一つでピッピッとお風呂ができちゃう(「湧く」という言葉はまだ使われているが、現代の日本ではこの動詞の意味からはかけ離れてしまっている)設備が整っていた。

しかし、滞在先のご夫婦はとても質素に生活していらっしゃる中国人だった。風呂桶の中には洗面器が置かれていて風呂に入る様子はなし。毎晩台所のガス台にヤカンを乗せて、お湯を沸かし、そのヤカンを風呂場に置いた洗面器に注ぐ。そして足に石鹸を軽くつけて洗う。足拭き用の古いタオルも置いてあった。ヤカンに入れる水の分量も、ガスの火を点けてからどのくらい経ったらちょうど良い温度になるかも、長年の経験からお見通しで、最初の夜に奥様に指導された。無駄がない…

寝る前に各々、足湯に浸かってから「お休みなさい」というわけだ。近代設備を全く無視した「昔ながら」の生活を東京の都心で味わってしまった。

【水漏れ】

話は数年後に飛ぶ。英国がロックダウンになって、シャワーからポタポタと水漏れがあっても緊急でないという理由で水道屋さんが来てくれない。もったいないので、水を溜め始めた。そして水洗トイレで利用し始めた。風呂桶に洗面器やバケツを並べて漏れた水を溜めながら、「足湯」を思い出した。

ヤカンをガス台にかける「昔ながら」ではなく、直接蛇口からお湯を溜めての足湯だが、イギリスの田舎の水道なので、ピッと押すと定温のお湯が出てくるわけではない。水がお湯になるまでバケツに溜めておき、熱くなった頃に洗面器をバケツの上に置くと、バスタブの蛇口の下にうまく収まる。そして溜めたぬるま湯はあとで水洗トイレ用に… シャワーを浴びる時も最初は水なので、やはりバケツに溜めることにした。節約するって充足感がある。

ロックダウン中は、運動不足解消のため、風呂に入ったら2階のバスタブのお湯は流さずに、バケツで階下に運んで庭の水撒きに使ったりしていた。

【寝つきの悪い時】

夜遅くまでパソコンの前に向かっていると、布団に入っても頭が休まらない時がある。しかし、毎晩「足湯」に浸かるだけで、頭から足にさあっと血が流れ込むような感じになり、足がほかほかとして、考えることがめんどくさくなり、とても快適に眠れる。

アテンドの際に中国人家庭にホームステイしたことは、全く予想外に、私の人生にとってプラスになっていた。ありがたや、ありがたや。

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