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翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その6

今回はマタス弁護士をアテンドしたときの話です。 ー 実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。

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(6)ラップトップ

【ブライトンでの上映会】

2016年に発表された臓器収奪の大掛かりな調査報告〈更新版〉(An Update)の内容を伝えるために、マタス弁護士が来英した。臓器収奪問題の調査者のマタス弁護士、『消える人々』の著者ガットマン、そして証言者のトフティ氏の三人が集まったので、当日の夜、ブライトンでドキュメンタリー映画『知られざる事実』の上映会が催された。ブライトンは、ロンドンから鉄道で約50分ほど南下したところにある海辺のリゾート地だ。

マタス弁護士に自己紹介して、三人を(この方向音痴の私が)ブライトンへ引率。皆さん、使命感に溢れていて動きもキビキビしていて、早めの電車に乗れた。

電車に座るや否や、マタス弁護士はラップトップを取り出し、カシャカシャと入力し始める。これはイベント中でも同じ。自分が話す番でなければ、メールの返事を書いたり、論文を書いたり、自分が弁護する難民申請者のための書類を書いたりされているようだった。そして、ボロボロになった皮の鞄から、引用に必要な書類をよっこらしょと取り出して、またカシャカシャと入力する。

小腹が空いた時のために、車中用にお菓子を用意していたが、「ノーサンキュー。 私はお腹が空いた時だけ、食べ物を口にする」ということだった。(そして、お腹が空くと、カシャカシャの合間に、パクッと食べる)。

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[マタス弁護士:いつでもどこでもラップトップ。『二人のデービッド』(4分30秒)からのスクリーンショット。]

早めに会場についたので、マタス弁護士はスクリーン前の自分の席に座ってカシャカシャ。私も翻訳すべき書類は山ほどあるので、客席でカシャカシャ。「何か飲みに行こう」というガットマンとトフティ氏に対して、自分一人が浮いていると感じたのか、あたりを見渡して「ゆかりも同じことしてるじゃないか」と自分を正当化する引き合いに出された。

大会場が満席になった。映画鑑賞のあと三人がスクリーンの前に座って質疑応答。製薬会社がグルだと怒り狂っていた人がいた(移植を受けた人が服用する免疫抑制剤の市場規模が馬鹿にならないのだ)。一人の観客は、「どうもピンと来ないのだが」と率直な意見を提示。ガットマンがそれに対して「無理もない。密室で行われていることだから。大虐殺のショッキングな写真を提示することはできない」と答えていた。最近、ガットマンは臓器収奪を「持続的なジェノサイド」と形容している。

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[2016年7月。ブライトンの会場で。左からマタス弁護士、ガットマン、トフティ氏]

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ワニブックスのニュースクランチで、本書 第一章の冒頭部分を紹介してくださいました。こんな感じで始まります。覗いてみてください。

第1回 「36人の身体は72個の腎臓と角膜になった」中国臓器ビジネスの実態




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