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翻訳者のつぶやき  何で私が『消える人々』を...

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「臓器収奪ー消える人々」はとてもヘビーな一冊なので、翻訳者のつぶやきを通して逸話や情報をお届けして、ゆとりのある空間をお作りできれば、とブログをはじめました。短い文章を頻繁に出し…
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2022年4月の記事一覧

翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その14

日本人の宗教観を理解するために、ちょっと近代史を探ってみました。 (...実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。) (14) 奈良ホテル【廃仏毀釈】 日本では明治維新のために仏教が排斥された。天皇陛下を中心に欧米列強と張り合う上で、仏教は邪魔者扱いされたようだ。 この仏教の破壊を、中国共産党による文化大革命と重ねてしまうのは行き過ぎかもしれないが、日本で従来受け継がれてきた仏教が否定さ

翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その13

なぜ法輪功を警戒してしまうのか?今回はこの点を考察してみました。 (...実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。) (13)警戒心『臓器収奪ー消える人々』では、第二章から、法輪功の始まり、中国共産党との対立、迫害、非暴力の抵抗が綴られていく。 日本では法輪功を課題にした客観的な論文というのは、私の知る限りでは、存在しない。英語圏に比べて客観的な情報が十分にない中で、生々しい拷問の写真が、

翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その12

今回は、第二章から始まる法輪功についてです。 (...実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。) (12)平穏な王国 【法輪功】 臓器収奪の第一章でウイグルのひどい話を読んだ後、第二章では舞台がいきなり、1992年の中国・長春となる。法輪功の始まりが記述されている。 ガットマンは1999年7月の法輪功迫害が始まった時、現場に居合わせていた。中国共産党政権と法輪功との対立を掘り下げなけれ

翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その11

ガットマン来日の続きです。 ...実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。 (11) スノーマン 【声が…】 2016年10月16日に東京の神田で開催の「中国・核の脅威」シンポジウムの前日のことだった。喉が痛くなった。声がでない。 これは深刻だ。通訳者と翻訳者の違いを痛感した。どんなに資料を翻訳して準備しても、当日、ガットマンのスピーチをその場で日本語で伝えなければ、わざわざガットマン

翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その10

ガットマン来日!2016年10月のことでした。  ...実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。 (10)キングコング【新疆で行われたこと】 日本にガットマンを招聘するのなら、The Slaughter (『消える人々』の原著)を翻訳しなければ...と取り組み始めたのだが、突然、ガットマン来日の話が転がり込んできた。 2016年10月16日に東京の神田で開催の「中国・核の脅威」シンポジウ

翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その9

今回は、生命倫理学という分野の存在に感動したトフティー氏の話です。 ...実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。 ◎  ◎  ◎ (9)ほがらかな酒【サマーキャンプ】2016年8月、日本での生命倫理学のサマースクールというのに、突然、トフティ氏が招かれた。ウイグル人の元外科医で臓器収奪の貴重な証言者だ。 サマースクールは、こじんまりとした発表の場だった。教授先生だけでなく、大学院生の発

翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その8

2022年4月5日、デービッド・キルガー元カナダ国務省アジア・太平洋担当大臣が永眠されました。2006年に臓器収奪に関する最初の報告書をデービッド・マタス弁護士と共著で発表された方です。今回はキルガーさんの思い出を綴ります。 ◎  ◎  ◎ (8)キルガーさん【幸運(しあわせ)の道しるべ】マタス弁護士同様、デービッド・キルガー氏(ここでは故人を偲んで「キルガーさん」と呼ばせてください)も2006年の調査報告発表以来、臓器収奪問題を各国政府や人々に知らせるため、世界各地を休

翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その7

今回は、国際学会というのに初めて参加した時の話です。 ...実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。 ◎  ◎  ◎ (7)ディナー【アカデミック・フォーラム】ブライトンでの上映会の翌日、マタス弁護士はThe International Academic Forum(IAFOR)主催の学会に参加することになっていた。世界中から学者が集まりそれぞれが自分の研究について発表する。研究者

翻訳者のつぶやき なんで私が『臓器収奪ー消える人々』を... その6

今回はマタス弁護士をアテンドしたときの話です。 ー 実に物騒な書籍の翻訳者になってしまいました。その経緯と本書の内容に関わる逸話や情報をお伝えできればと、ブログを書いています。 ◎  ◎  ◎ (6)ラップトップ 【ブライトンでの上映会】2016年に発表された臓器収奪の大掛かりな調査報告〈更新版〉(An Update)の内容を伝えるために、マタス弁護士が来英した。臓器収奪問題の調査者のマタス弁護士、『消える人々』の著者ガットマン、そして証言者のトフティ氏の三人が集まったの