「AMHの意味と注意点」 ~現状と妊活・不妊治療の考え方~
「AMHは残りの卵子の数」を表すと言われており、
AMH値が低いと落ち込んだり、
AMH値の結果から体外受精を勧められて気持ちが焦ったりする方も
いらっしゃると思います。
◎AMHとは何か?
◎AMHを理解する上での注意点
について書いていきたいと思います。
◎AMH(抗ミュラー管ホルモン)
AMH値は卵胞数を反映することから、
卵巣予備能の確認に役立つとして測定されます。
AMH値は月経周期に左右されず、測定時期の制限はないとされています。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では高値になり、
早発卵巣不全(POI)では極端に低下する とされています。
◎AMHの注意点①
「AMHは残りの卵子の数」を表していると言われることがありますが、
あくまでも【指標】だと思います。
●AMH値は誤差が大きいと言われています
短期間(3か月以内)に2回 AMH値を測定した場合、
約1/4の人が
・数値が半分以下
・数値が1.5倍以上
に変動したというデータもあります。
※0.9~1.1倍の変動があまりない人の割合は、約1/5(約20%)
多くのクリニックでは、一度AMHの検査をすると
それをもとに卵巣予備能を推測し、
治療方針に反映させているように思います。
※治療方針はAMH値だけで決めているわけではないと思います。
ただ、AMH値は誤差が大きいため、
一度の検査結果で落ち込んだり、
「卵巣予備能」や「卵巣年齢」を決めてしまうのは
リスクがあるかもしれません。
しかし、卵巣予備能の推測には
現状として AMH以上に有用なものがないとも言えます。
◎AMHの注意点②
『AMH値と 当該周期 の発育卵胞数が相関する』
というデータもあります。
卵子の元である『原始卵胞』から
→『1次卵胞』
→『前胞状卵胞』
→『胞状卵胞』
→『成熟卵胞』
になるまでには 約200~240日ほどかかります。
『原始卵胞』→『1次卵胞』→『前胞状卵胞』まで 約120日
『前胞状卵胞』→『胞状卵胞』まで 約65日
『胞状卵胞』→『成熟卵胞』まで 約20日
直径2~5mm以上の胞状卵胞になるとゴナドトロピンの感受性が高くなり、成熟卵胞であるグラーフ卵胞に成長し排卵します。
AMHは成熟卵胞からは分泌されず、
小・前胞状卵胞~胞状卵胞の段階で多く分泌されると言われています。
※そのうちの多くは胞状卵胞から分泌するという見方もあるようです
・『胞状卵胞』→『成熟卵胞』まで 約20日
・AMHの多くは胞状卵胞から分泌
→『AMH値と当該周期の発育卵胞数が相関する』
とされることも理解できます。
また、
・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では AMH高値
・早発卵巣不全(POI)では AMHは極端に低下
とされていることも理解できます。
自然な排卵の場合
いくつもある胞状卵胞のうち、
主席卵胞が成熟卵胞になって排卵し黄体へと変化していき、
その他の小卵胞はのちに消失していきます。
採卵の場合(自然周期の採卵を除く)
いくつもある胞状卵胞のうち、
主席卵胞だけでなく小卵胞も薬剤で刺激をして数多くの卵胞を成長させ、
なるべく多くの卵子を採取します。
→AMHは発育卵胞数の予測に役立つかもしれません
●AMH値が高値で多嚢胞性卵巣症候群の方が
採卵をおこなう場合は
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクを考慮して
薬剤による刺激をしていきます
上記データから
AMH値が高いほうが、多くの卵胞が育つと言えますが、
『AMH値は その周期 の発育卵胞数と相関する』
とすれば、 数か月前に測定したAMH値が参考になるかはわかりません。
◎AMHの注意点③
「AMH値が低い=卵子の質が低い」ではありません。
採卵した卵子の受精率・胚盤胞に成長する率・妊娠率は、
AMH値の高低との相関があまりないようです。
自然妊娠率も AMH値の高低との相関があまりないようです。
→AMHと卵子の質は関連がない
※妊娠率や出産率、卵子の質は、
AMH値よりも年齢のほうが相関があるとされています。
◎AMHの注意点のまとめ
AMHに関しては、まだまだ分かっていないことが多いです。
そのため、AMHはあくまでも指標として受け止めたほうが良いと思います。
AMHは、必ずしも「卵巣予備能」や「卵巣年齢」を表すとは言い切れない面もあります。
しかし、その推測にはAMH以上に有用なものがないというのも現状です。
採卵をする場合は、AMH値が高いほうが多く採卵できるかもしれません。
しかし、AMHは測定する度に変動幅が大きいケースもあるため、
数か月前や1年以上前の数値が参考になるかはわかりません。
AMHと卵子の質に関連はありません。
AMH値が高いとすぐに妊娠するわけではなく、
AMH値が低いとすぐに妊娠できないわけでもありません。
AMH値に大きく振り回されるよりも、
AMH値の高低に関わらず、
体質改善などで卵子の質を上げていくことが
妊娠・出産の可能性を高めることに繋がる
ということも理解していただければ幸いです。
AMHはあくまでも指標であり、
AMHの注意点や他の検査結果、年齢なども考慮して、
妊娠・出産を希望する場合は、
人生設計や治療計画を考えたほうが良いかもしれません。
ゆかり堂治療院
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