妊活のヒント 妊活のデータ・情報を正しく読み取れば 不安を減らすことができます
8月末の報道で目にした方も多いかもしれません。
『体外受精児、10人に1人 保険適用で増加か(2024年8月30日 共同通信)
2022年に実施された不妊治療の体外受精で誕生した子どもは、過去最多の7万7206人だったとの調査結果を、日本産科婦人科学会が30日公表した。前年から7千人以上増えた。厚生労働省によると、22年の出生数は77万759人。およそ10人に1人が体外受精で生まれた計算になる。
治療件数は54万3630件で、前年より4万5千件以上増加。データを取りまとめた片桐由起子・東邦大教授(生殖医療)は「医療保険の適用が始まり、ハードルが下がったのだろう」と説明している。』
特に何も疑問を持たない方も多いかもしれません。
私は気になる点が少なくとも3点あります。
①データを正しく読み取る
公表された日本産科婦人科学会のデータを確認しました。
『2022年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績』
治療件数 543,630件 出生児数 77,206人
厚生労働省の『人口動態統計』による出生数
2022年 770,759人
間違いはないです。
しかし、
日本産科婦人科学会のデータは、
2022年におこなった体外受精・胚移植等の臨床実施成績なので、
出生児数の多くは2023年に生まれています。
予定日どおりに生まれるとは限りませんが、
2022年4月以降に胚移植をおこなっていると、
ほとんどのケースで、出産予定日は2023年1月以降になります。
日本産科婦人科学会のデータは、追跡調査をしているようなので、
治療による出生児数は合っていると思いますが、
2022年に生まれたとは記載されておらず、
「2022年に実施された治療によって」生まれたこどもの数が
77,206人であり、
2022年に生まれたこどもたちはその一部です。
『2022年に実施された体外受精で誕生した子どもは7万7206人
2022年の出生数は77万759人
→およそ10人に1人が体外受精で生まれた計算になる』
という報道は間違いということです。
2022年に生まれた770,759人のうち、
体外受精によって生まれたこどもの数を正確に把握するためには、
2021年の治療データも詳細に分析しなくてはなりません。
②不妊治療の保険適用が始まったのは2022年4月から
上記のように、
2022年4月から不妊治療の体外受精を始めたとしたら、
1回目の採卵・胚移植で妊娠したとしても、
出産予定日は2023年1月以降になります。
体外受精をおこなった方はわかると思いますが、
通院を始めてからすぐに胚移植をできるわけではなく、
初診~検査~採卵~受精卵凍結~胚移植~判定日
となることが多いので、
初診から2~3か月経過してから胚移植になるケースが多いです。
採卵して受精した受精卵を凍結保存することが多いですが、
仮に、凍結せずに新鮮胚で移植しても、
2022年4月から治療を始めた場合、
早産でない限り、2022年中に生まれるケースは少ないでしょう。
なので、
2022年4月から体外受精・胚移植等が保険適用となったことが
2022年の出生数に反映されているとは考えにくいです。
『(2022年の)治療件数は54万3630件で、前年より4万5千件以上増加。
「医療保険の適用が始まり、ハードルが下がったのだろう」と説明している。』
というのは、
治療件数が増加しているのは保険適用の効果かもしれません。
しかし、保険適用によって
『およそ10人に1人が体外受精で生まれた』
ということではありません。
『体外受精児、10人に1人 保険適用で増加か』
↑
『体外受精児、10人に1人』は①で述べたように間違いであり、
『保険適用で増加か』はミスリードのように感じます。
③自費か保険適用か
日本産科婦人科学会のデータでは、
体外受精、顕微授精、凍結融解胚の分類はありますが、
自費か保険適用かの分類はありません。
『治療件数は54万3630件で、前年より4万5千件以上増加』
は事実ですが、
『「保険適用が始まり、ハードルが下がったのだろう」と説明している』
という点に関しては不明です。
保険適用によって、
治療費負担が軽減され、治療を受けやすくなったという現状はあります。
しかし、
保険適用外(自費)で体外受精や胚移植をおこなっている方もいます。
以前の助成金の時は、
治療内容に関わらず、助成金を申請できました。
保険適用導入後は、
保険適用の範囲で治療を進められる人もいれば、
治療内容によってはすべて自費になった人もいます。
治療件数が増えたのは、
『「保険適用が始まり、ハードルが下がったのだろう」』
ということかもしれませんが、
自費と保険適用の分類をしたデータからの発言ではないので、
憶測にすぎず、正確とは言えません。
情報・データを正しく読み取る
何も疑問に思わわず、データや情報を見聞きすることもあると思いますが、その中にはミスリードもあります。
以前に投稿した
の中でも、データの読み取り方について触れています。
妊活のデータだけではありませんが、
・事実と異なる
・意図的なミスリード
といったデータや情報がたくさんあります。
データや情報を正しく読み取ることは、
自分を助けることにもなりますので、
心がけていただければ幸いです。
ゆかり堂治療院