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不可思議刊行筆風録9

前回

 さて。こうして『不可思議短編集』は刊行され、2019年9月1日に全国の書店に並ぶこととなった。待ちに待った発売日、地元の本屋さんの棚にちゃんと置かれているのを見たときは、感慨もなかなかのものであった。学生時代に(主にマンガを買うのに)足しげく通ったお店に、今度は自分の本が並ぶ。それ自体は嬉しくないはずがない。
 で、発売日を迎えるにあたって、新聞広告以外にも何かしらのアナウンスがあるかしら……と、ちょっとばかり期待しつつTwitterを開いたわけだけど。
 部署ごとにいくつかある出版社のアカウントをそれぞれ眺めてみても、それっぽい告知は特にない。いくらか待っても触れられる様子もなければ、意を決してリプライ送ってみてもとりたてて反応はなく。

 ザ・しずかな船出。

 無事に出版・刊行はされた。私をよく知る古い友人の何人かはこの時点で手に取ってくれて、そこは心から感謝している。がしかし世の大勢の人たちは刊行の事実も、この本の存在さえ知らないわけだ。つまりは。
 たとえばハンドメイド雑貨とか、とにかく自分で何かを作って販売したことがある方は心当たりがあるかもしれない。完成して世に出たからといって、そう簡単に売れるものでない、という事実に。
 発売直後こそ動きが見られたものの、amazonのランキングを見る限りでは年を越すか越さないかのあたりからほぼ順位が転がり落ちていくばかり、だったような気がする。それまでの作業である程度燃え尽きていたのに加え、下半期は折悪しくサラリーマン業の繁忙期と重なり、自発的な広報・宣伝活動はなかなか手を付けられなかった。

 包み隠さず本音を吐露しまえば、とにかく売れてほしい。自分の墓標だ何だと格好つけてみても、まるで手に取られないよりは読んでもらえた方がそれは嬉しいわけだ。その為に、何かいい伝達手段はないか。
 そうして模索し、たどり着いたのがここnoteだった。2020年の1月、年明けとともに時間と余力が捻出できるようになってきた、そんな時期だった。
 それから先のことは、記事をいくつか眺めていただければよいかと思う。今にして考えれば、最初は存在をアピールするためにずいぶん自己顕示欲にまみれた記事を書いた。しかしあれから数カ月、色々な方との交流を経て少しばかり考え方が変わってきたとともに、新たに書籍を購入いただいた方もいらっしゃる。ありがたい話だ。
 大ヒット、とか重版などにはまだ少し遠い。けれども、ここに来てよかった、と思う。ニンゲンがそうであるように、創作物が育っていくにもまた、誰か他の人の手が必要なのだ。創作者は、よりより創作のために研鑽を積んでいかなくてはならない……。

『不可思議短編集』刊行までの話は、一旦ここで完結だ。しかしこれから先、この本が纏うこととなる新たな出来事があった時には、またここに書き記していきたい。
 願わくば、一冊の書籍の成長録として、枝葉が広がっていきますように。

おわり。

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