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『アルゴスの戦士 はちゃめちゃ大進撃』を遊ぶ【ファミコン】

聖地アルゴールに突如として現れた獣王ライガー率いる獣人族、一夜にして侵略された聖地に平和を取り戻すため、遠くアルゴスの地より戦士は蘇る!

 ……というのがゲームのプロローグらしい。プレイヤーはタイトル通りに『アルゴスの戦士』となって、聖地アルゴールを横行闊歩する獣人族をひたすら叩きのめしていく。聖地アルゴールやアルゴスの地が何処にあるのかは不明だが、アーケード版のオープニングデモによると舞台は地球のようなので、地球上どこかにはあるのだろう。

 説明書が無いので☝のサイトを参考に話を進めると、聖地アルゴールは『竜の哭く谷ゲルロゼオ』を中心として各地と繋がっているということだ。、ゲームスタートはだいぶ僻地の『スエル山地』からとなる。戦士は遠くアルゴスの地から山を越えてやってきた、ということか。ファミコン版のパッケージこそずいぶん可愛らしいデフォルメキャラが描かれているが、ゲーム画面での戦士の姿はアーケードの方に近い。筋骨隆々の半裸で討ち取った獣人の生首を掲げるあの姿だ。そりゃあ山の一つや二つ越えたうえで武器のディスカーマーをバンバン振り回して戦えるだろう。さすが伝説に残る男よ。

 ラスボスである獣王ライガーの居城を目指すにあたり、各地に隠れ住む仙人に助言をもらいながら、5人のインドラ――聖地アルゴールを繁栄させた神々を探すこととなる。どちらも半裸筋骨隆々の爺さんである。なぜ皆が皆半裸なのか。そもそもアルゴールのシンボル的存在であろうインドラたちがその格好なのだから、その辺一帯では半裸がフォーマルなのかもしれない。ただ半裸よりも特筆すべきはその巨躯きょくで、座った状態で戦士の2倍ほどの高さがあり、かつが戦士の身長とほぼ同じである。立ち上がって拳でも振るおうものなら大抵の相手をぶっ飛ばせる気がする。にもかかわらず獣人たちになす術もなく戦士を頼り切っているのを見ると、戦いは苦手なのだろう。それは単に健康に気を遣っているだけでは。
 彼らは情報やアイテムを提供してくれる心強い味方に違いない。しかし無暗に近づいてはいけない。幽閉されているインドラはともかく、仙人の隠れ家においても仙人の座す場所と戦士の立つ場所のあいだにはなぜか足場がなく、うっかり足を踏み外すとそのままゲームオーバーになってしまう。あるいは獣人族を陥れる罠なのかもしれないが、頼みの綱の戦士まで一緒くたに罠に嵌めようとするのは仙人を名乗る名乗らない以前に人としてどうなのか。やはりまだ修行中ということなのか。
 最初は進めなかった場所も、インドラから授けられる神器によって進めるようになっていく。谷や川に張られたロープを渡っていくのに必要なのが『風の滑車』である。そう滑車なのである。高い所から低い所へ下るときはともかく、低所から高所へ上るためにはどうしろというのか。やはり腕力によるのか。いやしかし『風の』滑車というくらいだから、上りのときくらい風の力でいい感じに押し上げてくれるとも考えられる。でなければ半分はイヤがらせにも思える。というか、滑車なんて言わずに魔法のじゅうたん的なモノとか、せめて跳躍力の上がるとかを授けてもらいたかった。筋肉質の神がもつ神器だけにやはり筋肉に訴えかける要素が仕込まれている。
 さらに行動範囲を広げる神器に『炎のボーガン』がある。こちらはロープが張られていない杭にロープを張ることができるもので、ボーガンでありながら戦闘の役には立たない。まあ行動範囲が広がるだけでも十分ではある。『炎の』ボーガンでロープを張るということは、各所に立っている杭は一見木製に見えても実はそういうガラのなのかなと疑ってみたりもした。しかし説明書(代わりの先のウェブサイト)には『木のくい』と明記されている。撃ったらすぐさま燃え上がりそうだが火の手が上がることはなく、炎のボーガンから撃たれるアローの方はどうやら普通の矢のようだ。もしかしてボーガンが燃えているのか。であればさしもの戦士もダメージを受けようが、そうした素振りは見られないのでボーガンの方もおそらく燃えていない。勢いで強そうな名前付けただけの可能性が高まる。たとえば『燃える闘魂』のような。けれどもどれだけ強そうな名前が付けられていても戦闘の役には立たない

 ところで聖地アルゴールで出会う人物は先述のインドラと仙人のみ、つまり年嵩の男ばかりである。もしかして聖地には女性も子供もおらず、屈強な男たちが細胞分裂か何かで増殖していくのかと思いきや、道中で出会う仙人の一人が『娘を返せ』といった旨の発言をしていたので女性がまったく存在しない世界というのでもないようだ。しかしアーケード版には獣『』と表現でき得るヒト型の敵がそこそこいたものの、ファミコン版では獣人と言いながらヒトと似た形の敵はあまり多くなく、爬虫類っぽいやつの方がずいぶん多い。つまり人間の女を攫う必要もあまり無さそうに思われる。獣王ライガーは一応ヒト型をしていてもカオが思い切りライオン風なので、人間の女に何かしらの価値を見出すかは若干疑わしい。それでも悪いヤツというのはとりあえず女性を攫っておくものらしい。とりあえず許すまじ。

 アーケード版と比べると大きく仕様が異なるもののアクションゲームとして出来は良く、ディスカーマーの一撃で敵を爆発四散させながら進むのは単純に気持ちがいい。アーケード版で攻撃の際に発していた掛け声がファミコン版では無くなり、色味の抑えられたグラフィックとも相まって印象としてはやや静かになった。ただそれは画面を通して、存亡の危機に瀕したアルゴールと、ひとり戦いに赴く戦士の悲哀がより感じられる、ともとれる。
 ファミコン実機だとコンティニューは無限でもクリアするまでは電源を入れ続けておく必要があり、成長要素がありながら中断や中途再開の術がなく困るところだったが、Switch Onlineでの配信ならいつでもセーブ&ロードが行えるおかげで非常に遊びやすい。昨今の複雑なルールのゲームに少し疲れたとき、シンプルかつコンパクトな『アルゴスの戦士 はちゃめちゃ大進撃』で遊んでみるのは如何だろう。ただし操作キャラの戦士を含めて登場人物は全員半裸である。

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