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#ショートショート #ファンタジー ある日のこと、男子高校生の域成逢斗は凍ったバナナに頭をぶつけて意識を失い夢とも現実ともわからない中で異世界の神に導かれレベル最大かつ強力スキルを持った状態で現代日本とは違う世界に勇者として転生し、神的な力によって個人的な都合や展開を色々すっ飛ばした状態で魔王の居城の玉座の部屋の一歩手前の扉の前で今まさにラスボスと対峙しようとしていた。 「たのもう!!」 逢斗が物々しい扉を力まかせにはね開けると、玉座に腰かけた魔王と視線がぶつかった。魔
雨風の強い日だった。ごうごうと空気がうねり、地面には滝のような雨が降り注いでいた。 「弱ったな」 まばらに生える背の低い樹木に寄り添いながら、旅人は小さく息を吐いた。つい昨日までは、照り付ける日差しにこの身を焼かれていたというのに。 どうにか枝葉の陰にすがってみても、横殴りに打ち付ける雨粒からはまるで逃れられない。いつまで降り続けるのか見当もつかないこの雨の中、足を止めたままではかえって身を亡ぼすことになりそうだ。旅人はまた歩き出した。幸い、夜の訪れまでにはまだ少し時間
運命に導かれるかの如く邂逅を果たす勇者と魔王。史上稀に見るスケールの小さな戦いが、今、始まる! プロローグ 世界は震撼した。 長く平和を甘受していた人々の前に、突如として『魔王』を名乗る存在がその禍々しき姿を現したのである。 魔王――地方によってはイケメンだったり美少女だったりしてすっかり風格の薄れつつあるそれだが、このとき現れたのはそのような類のものとは一線を画す、まさに魔王と呼ぶにふさわしい形貌を有していた。 黒色に近い肌と尖った耳を持ち、見たもの全てを射殺す様