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新玉狂い

狂おしいほど好きな食べものの一つに新玉ねぎがある。
もともと、玉ねぎ特有の辛みや風味が好きだ。火を通して甘くとろけたやつも良いが、やっぱり一番は生のまま。
すすんで野菜を食べることの少ないわたしだが、オニオンスライスだけは子どもの頃からばくばく食らっていた。

ひとくちにオニオンスライスといっても、新玉ねぎでつくるそれはもう、通常のやつとは別格のおいしさである。
果物のようなみずみずしい甘みと、棘が少なく程よい辛み。ポン酢やしょうゆをかけるだけで立派な一品になるし、お刺身やどんぶりに載せれば途端に見た目が華やかになる。

なんなら、何もかけずにそのまま食べたっておいしいのだ。
実際わたしは小腹がすくと、作り置いたオニオンスライスを冷蔵庫から取り出してはよくつまんでいる。(えっ

しかも、家の近くのコンビニではなんと、中サイズ二個入りが108円という良心価格で売っているのだ!
店頭で見かけるようになってからというもの、来店のたびに喜びいさんで購入し、一日あたり二分の一個ペースで消費しつづけている。
きっと、ここ数週間で血液はずいぶんなめらかになったに違いない。

ふにゃりと頼りなくやわらかい新玉ねぎを手に持つと、どうしても新生児の頭を想像してしまう。
てっぺんを切りおとして皮をむき(どこまでを皮とするかの判断が実に難しい)、まっぷたつにして芯を切りとると、あとはひたすらじゃこじゃこスライスするだけだ。

みじん切りもまたしかり、すっかり無心になってしまえるところが良い。
ぬるぬるのエキスで手をすべらせないよう、うっかり指までスライスしてしまわないよう気をつけながら、何度も角度を変えて限界まで薄くする。

これ以上は無理だというところにきたら、あとは包丁で適当に薄切りにして、水に放ったらおしまいだ。
あの辛みが好きだとはいえ、食後も口の中に風味が残りつづけるのは嫌なので、新玉ねぎでも5~10分は水にさらすようにしている。

やっかいなのはこのあとで、そのみずみずしさゆえに、いくら手でぎゅっと絞っても水っぽさが消えることがないのである。
ならばとキッチンペーパーでふき取ると玉ねぎがいっぱいくっついてしまうし、ストレスを感じることこのうえない。
なんとか解消できないものかといろいろ調べていると、繊維を断つように包丁で切れば、水にさらさずともかなり辛みが軽減されるのだと知った。

さっそく試してみると、スライスの何倍も楽ちんだし、なるほど辛みもずいぶんと少ないではないか。
以降、ずぼらなわたしはスライスではなく薄切りを採用している。

最近つくったものの中だと、アボカドの上にオニオンスライスとかつお節をのせ、ポン酢を回しかけたやつがめちゃくちゃおいしくて感動した。
さっぱりした新玉とクリーミーなアボカド、一見喧嘩しそうでは? という組み合わせだが、実はちょっと信じがたいくらい相性が良い。
簡単なうえにボリュームもあるので、ぜひ一度お試しいただきたい。

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