見出し画像

檜原村 田中林業視察「身近なことを研究するのが生き様」

「身近なことを研究するのが生き様。自ら自分をいじめ続けた。今は林業が楽しくて仕方がない。趣味だ。」

画像1

2020年3月、檜原村に江戸時代からある林業家「田中林業」代表田中惣次さんに、所有林の中を案内してもらった。

田中さんの手がける山には広く作業道が通されている。50年かけて太い材を作り搬出するためには欠かせない道だ。田中さんは70歳を過ぎてなお、広大な土地に一人で入り、道を開き、間伐し、搬出をしている。苗を育て、適所適木を目指して植林も続けている。様々な品種の木々を植えることは、災害や病気に備えるにあたりリスク分散をすることが出来る。けれど、その木が材となり商品として売られていくのは50年後…未来の後継のために木を植え、育て、自らも先人が残してくれた木を売っていく。木材生産は想像を絶する長い物語。

画像2


「東京に本当の林業家は田中林業を入れて2つしかない。」と田中さんは言う。
田中さんの山は、愛につつまれた広大な木のファームだった。とても可愛がられているのが良く分かった。地上に届く光が揺らめいて美しい。この何気ない光も、田中さんがどうやったら光を届けられるか?と針葉樹と広葉樹のバランスを考え、何年も下刈りを重ねながらデザインされたもの。

画像3

「難しい。難しいから面白い。」

ニコニコと笑いながら、いまの人たちはラッキーだと田中さんは言う。だって生活が出来ているじゃない!!生活もままならないほどの苦労を重ねたからこその言葉。

「知好楽」

まずは知って観察して、好きになれば楽しい。

「そして足るを知ることも大切」

幸せな生き方とはどんなものなのか、何度でも自問していくこと。森の中で体を動かし、健康になり、趣味と仕事が融合しながら楽しく働く。金銭主義に走らない。それが、田中さんの考える幸せな生き方。

30年後に東京の森は『100年の森』になる。
田中さんの中には30年後の美しい森が見えている。作業道には、林業従事者のほかにも、村や都心の人たちが入りピクニックや散策をしている。森は恒続林であり、植林を必要としない天然更新。杉と檜のほかにも広葉樹や多様な動植物がバランスよく暮らす。そんな森を想像しながら、後継者に自らの仕事をもってメッセージを渡している。

檜原村らしい林業とは?と聞いてみた。

「やっぱり道だね!作業道を通して、間伐・択伐を重ね大きな材を作り出していく。皆伐はしない。」

田中さんは森の道に誇りと大きな期待を持っている。田中さんの作る道こそが、檜原村の林業の新たな未来を切り開いていく。

画像4


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?