国際機関のリーダーシップ:素晴らしい上司から学んだこと

6月11日のnoteの内容を日本語で書きました。同じことを対談でも話しています。)

国連職員だった17年間の間に何人の直属の上司と働いたかを数えてみたら、14人だった。平均するとほぼ1年毎に上司が変わった計算になる。国籍も皆違った:アメリカ、ネパール、ソマリア、イタリア、オランダ、バングラデシュ、パキスタン、ヨルダン、イラク、インド、デンマーク、ポルトガル、ジンバブエ、そしてカナダ。

直属の上司の上司も数に含めると30人近くにも登る国籍も文化背景も違う様々なリーダー達と働いたことは、貴重な経験だった。皆それぞれのリーダーシップのスタイルがあり、一人として同じではなかった。そんな多様な上司達から、リーダーシップについて様々なことを学ばせてもらった。

中でも常に心に留めている三つの学びをシェアしたい。

1)どんな人に対しても変わらず誠実に接する

これは組織の中でもトップクラスのエグゼクティブだった上司から学んだ。補佐官として間近でその仕事ぶりを観察し、相手が誰であっても(例:一国の大臣でも、一学生でも)全く変わることのない、誠実で丁寧な人との接し方を尊敬していた。上司は立場上様々な人と接する機会が多くあったのだが、それが対面でもメール上であっても、そのやり取りには常に相手に対するリスペクト、敬意があった。当然のことながら、そんな彼は私のかつての上司達の中でも、最も人々に敬愛されていた上司の一人であった。この上司はラテン系(ポルトガル人)で時にお茶目な一面も見せるチャーミングな人で、周囲の人たちをリラックスさせ、上手に能力を引き出すことのできる人だった。彼のリーダーシップのもとで働く多くの人々が最高の仕事ぶりを発揮する場面を何度も目撃した。かく言う私も、その恩恵を受けた一人だ。

2)最高の正解を追求する

これは私が今まで出会ったリーダー達の中でも、最も素晴らしい頭脳の持ち主であったジンバブエ人の上司から学んだ。彼は元弁護士で、コフィ・アナンが国連事務総長だった頃、そのスピーチライターだった経歴の持ち主だった。この上司の元で働いていた頃、新たな課題に取り組む際、まず最高の解決策ないし正解を見つけ、それから実現方法を考えるやり方を学んだ。現状で実現可能なことが何か考慮してから解決策を考えるのではなく、である。これは言うは易く行うは難しで、無意識のうちに自分にかけていた制限にまず気づく必要があった。この上司のお陰で、制限を外して大きく考え、その課題に対して最高の正解が何かを追求したことで、私はいくつかの革新的なアイデアをチームと共に実行に移すことができた。もちろん、その道のりには苦労も多かったが、その分喜びも大きかった。この学びから得た経験によって、プロフェッショナルとして大いに成長できたと思う。

3)ハッピーなチームを作ることがリーダーの仕事

すべてのチームリーダーの最も大切な仕事はハッピーなチームを作ること。これを私はとある日本人の上司から学んだ。彼もまた、多くの部下に敬愛され、一度でも彼の元で働いたことのある人のほとんどが、ぜひもう一度一緒に働きたいと言うような上司だった。私は幸運なことに、二度共に働く機会があったのだが、人道援助の最前線で働くスタッフを常に気遣い、頻繁に現場でスタッフと共に過ごすその姿に感銘を受けた。今まで出会った中で最も現場主義のリーダーだった。例をあげると、2013年に巨大台風がフィリピンを直撃した際、48時間以内に第一陣の救援部隊を連れて真っ先に現場に赴き、あっという間に緊急人道援助の基盤を立ち上げたその手腕は鮮やかだった。特に台風のような自然災害の場合、援助関係者の住環境も限られていてその多くは快適なものではないことが多い。けれども、数週間から数ヶ月、長い場合2年もの間緊急援助の現場で働くスタッフの住環境は、仕事ぶりにも影響を与える。このことをよく理解し、スタッフの生活にも心を配ってくれた上司だった。この上司のおかげで、紛争の続くスーダンのダルフール地域に赴任していた当時の宿舎は、他の人道援助関係者達が羨ましがった位快適だった。宿舎でちゃんと休息することができて、チームの士気も上がり、良い仕事をすることができた。(注:ダルフールでの生活については6月26日のnoteにも書いた。)

この三つの学びは、どんな業界にも通用するものではないだろうか。もちろん、私自身もこれら三つの学びをこれからの人生でも実践するつもりだ。


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