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第二十九話 シノノメナギの恋煩い
だけどもなんでわたしにモテ期が到来したのだろう。
わたしを引き取ったばあちゃんはわたしが女の子になりたいってことを理解してくれて子供の頃から可愛いふりふりの服を着せてもらって女の子として育ってきた。
女の子はこれから強くなる時代なのよと何故か空手も習っていた。ミスマッチでしょ。髪の毛を一括りして時には振り乱して。
好きな男の子できてバレンタインの時に告白したら次の日黒板に手紙を張り出されてその男の子には白い目で見られた。
本当にあの時は傷ついたし泣いた。でもその時助けてくれたのは女の子たちでわたしが男の子でも同じ女の子のように接してくれる方たちばっかりだったな。
高校までは化粧できなかったけど大学からは女友達にお化粧を教えてもらったり、お洋服をもらったり、一緒に買いに行ったり、女装サークルに入って磨きをかけたり。
そして図書館の面接はスーツはスカートで受けた。
わたしは恵まれている方で周りの人は女として生きていくわたしを受け入れてくれた。
大学3年の時に死んだおばあちゃんも綺麗になったね、梛の花嫁姿を見たかったよと最期言ってくれた。
そしたら30超えた時一気に来たモテ期。しかも男性! そして初彼氏。
彼氏できたのにこんなにモテてどうするのよっ。
そういえばこないだ変な夢を見た。
……母さん、わたしの目の前になぜか母さんがいた。
あなたはわたしが30歳の時に死んだはずなのになぜ。ちゃんとお葬式で手を合わせたのにまたあらわれたの?
「あんたはわたしに似て本当に可愛いんだから。男を引っ掻き回す人生も楽しいもんよ」
最後まで綺麗に化粧をしていておしゃれな格好をしていた母さん。最後は東京で男の家で階段から落ちて死んだらしい。何人目の男なんだろ、知らないや。
「でもあんたはあの男に似て消極的で引っ込み思案で押されやすいからねぇ、そこがだめなのよ。ウジウジして。こっちから押さないとだめなやつああ、うんざりだよ」
母さんはわたしの前に現れるたびに傷つくことばかり言って去っていく。こういう時にばあちゃんが塩出してきて撒くのよね。ばあちゃんも自分の娘ながら情けなくてしょうがないよと泣き喚いてたけど母さんは
「ばあさん、あんたの血を私、そして梛にも受け継いでるのよ!」
と叫んで帰っていく。わたしはあんな女になりたくない、ばあちゃんはどんな人だったか知らないけど本当に優しい人だった。
目の前に塩があればたまに出てくる母さんに撒いてやりたい。でもできない。なんでだろう……。
わたしはあんたと一緒じゃないよ、母さん。って思った。
続く
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