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第三十話 シノノメナギの恋煩い

 食後はわたしが食器を洗う。常田は食洗機買ってあげるよと言うけど……その理由はわたしの手が荒れるとかわいそうだからだって。もぉっ、なんなの。新婚の夫かいっ。

 でもお互い忙しいからあってもいいけど……2人一緒に暮らしたらなんだかんだ物が増えた気もするけどごちゃごちゃしちゃダメよね。悩む。

 落語のCDを聴いて笑ってる常田を横目
に。
「なんや、何見てる?」

 私の方に寄り添ってきて首筋にキスをしてきた。さっきもしたのになんで……もう。
 ああっ、舐めないで……。
 もぉおおお、またキスマークつけないでっ。昨日の分も残ってるのに。

 って、本当に常田は30年も彼女いなくて童貞だったのかってくらい日に日に変態になってるんだけどおおおお。

「ほんま梛は可愛い」
  常田が変態過ぎてかっこよすぎて、恥ずかしいのも相まってのぼせそう……。

 ベッドの上でも常田はまたしつこかった。たけど実際はチャラいを装ってたのにここ最近はそのチャラさを上回って……。
「なぁ、梛なに考えとんのや。僕のことだけ考えろや」
 ああああああっ、どうなってんの常田っ!



 次の日は休みだったから2人でドライブ。わたしはチェックワンピースとコートをを着た。
 そろそろ本格的な冬服を買いたい……寧々のお店で買ったのもあるけど常田にも冬服を買ってあげたいなと思って。久しぶりにお店に行く。寧々はもういないけどさ。

 一応メンズもあるブランドで、小柄だけど首太くて胸板厚い常田に合うサイズあるかなぁ。レディースメインのところで少し戸惑う常田。こういうブランドのお店はあまり行かなくて、ファストファッションばかり。意外。でも着こなしてるからすごい。
「ええよ、普通で。でも梛の好むようにしてもええで」
 そう言われると迷っちゃう。こういう時に寧々だったらすぐ決めてくれるんだけどなぁ。

「いらっしゃいませ」
 あ、よかった……寧々いるじゃない……ってなんで寧々がいるの!

「久しぶり、梛」
 目の前には同居人だった寧々が店員としていたのだ。やめたはずだったのに。

「あれから店長に説得されてもどったのよ。あ、彼氏さんだよね? はじめまして、寧々です」
「はじめまして、常田です」

 なんか複雑。同居人だったと言っても女の子だし……。でもなんだか寧々が前よりも穏やかになっている気もする。
 ふと彼女の左手を見ると薬指に指輪があった。……前の彼氏とよりを戻したのかしら。

「あ、わたし今度結婚するの。前の彼氏じゃないよ、店長……」
 と彼女が指を指したほうにすらっと塔のように高いこじゃれた店長がたってた。私とタイプ全然違うんですけどぉ。誰とでもよかったのかしら……。

「あ、梛。彼氏さんにはそっちの方が似合うと思うから」
 となんだかんだしてるうちにゆるめのトップスとボトムを選んでくれてついでにわたし好みの新作ワンピースを選んでくれて……あいもかわらずわたしは寧々に買わされるのであった。

「ありがとう、また来てね」
 とニッコニコ。……結婚が決まると気持ちにも余裕ができて安定するのね。

 いいな、寧々。あなたたちは男と女。結婚できる、子供が産める。

 無い物ねだりしたってどうにもならない、わかってる。

続く

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