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不器用なひとのする、パズルの要領で

ここひと月ほど、胸のあたりに穴が空いているような感覚に陥る。そこから元気や勇気や愛みたいなものがほろほろと落ちていくので、胸のなかがいつまでもいっぱいにならない。秋に入ったので、そのせいもあるのかもしれないけれど。

暮らしそのものは、ごくささやかで植物や生き物に囲まれ愛にあふれている。けれど胸の穴をふさぐピースが見つからない。下を向くたびに穴から名前のないなにかを落としつつ、一日一日を静かに暮らしている。

このあいだ友達に会った。いまこんなふうだと話したら、彼女はわたしも絵を描くことに前向きになれないと言っていた。かわりに陶芸を始めたらそれがとても楽しくてすごくいいと。

土に触ること、手でものを作ること、自分の力の及ばない偶然のあること、そういうことがひとの心を癒しているのだろうか。コントロールしなくてはならないことが多い社会で、規範の外にあるものに触れる。時計のリズムではなくて生き物本来の息遣いに立ち戻る。花を描くときに花と呼吸をあわせる、そんな感覚なのかもしれない。

思えば以前から陶芸をやりたいと思っていた。ルート・ブリュックの大胆な形とたゆたう色を、石本藤雄さんのぽってりした花を、昔作ったうつわを眺めるたびに、やりたい、と思った。

でも、切り絵も楽しいし、木を触るのも好きだし、陶芸を始めるならいろいろ学びたいから学校に行こうかなあと考えているうちに、なんとなく始めずにいたのだった。

まずは気になる工房のワークショップに行ってみることにした。不器用なひとのするパズルの要領で、穴の形にあうものを愚直に探していきたい。そんな季節である。


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