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生の絵具のきらめき

世界堂へ行って顔彩を買った。

藤紫、青草、沈香茶、牡丹、色の名前を頭のなかで読み上げるだけで心躍っている。

ここ何年間はずっとリキテックスというアクリル絵の具を使っていた。けれど歩いていける距離にある画材屋さんが閉店してから、ずいぶん買いにくくなってしまった。画材を買うときは世界堂と、別の店をはしごしないといけない。

リキテックスは発色がうつくしく、耐水性で、透明感があり、乾くのも速い。わたしはかなり薄めて水彩のように使うのが好きで、ちびちびと出しながら使っているから長持ちするのだけど、それでもお気に入りの薄紫や薄茶の絵の具が固まって出なくなってしまった。

それなら、と、今日は顔彩をメインで使って描いた。水の量によって変わるにじみ方、色を重ねたときに引いてあった絵の具が溶け出すタイミング、描きごこちが違う。新しくおろした日本画の筆の先端が水を含んでもしゅっとまとまっていてとても気持ちがいい。

そうして描いていると、植物を観察するときの心の動きととても似ていることに気がつく。下書きにとらわれて硬くなった心がするりとほどけるような感覚がある。

顔彩の水分が飛んだあと、表面がきらきらと光っているのもうつくしい。額装したらアクリル板の光沢で見えなくなるような繊細な光のつぶて。スキャンでデータにしたときにも消えてしまう、生の絵具のきらめき。展示では絵をそのままフックなどで飾るのもいいかもしれないと思いがけない発想が生まれる。

リキテックスも、顔彩も楽しい。ステンシルも紙版画も導入したい。いろいろな画材で、複合的な画面が作れればいいなあと思う。さまざまものの面がひとつのところに集まって暮らしているような、そんな絵を描いていきたい。

いつもお読みいただきありがとうございます。いただいたサポートは、これからの作品作りに使いたいと思います。