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「呪い」を解く

個展が終わり、もうひと月がたった。いろいろな事務的な処理を残したまま、大きめな仕事の締切に向かって必死で絵を描きつづけていた。ほかのことを考えたり、休んだりする余裕が持てず、いいものを作ろうという気持ちひとつでなんとか食らいついて登っていった。そしてひと段落ついたとき、「登ったぞ!」という達成感と同時に、「さて、何しよう」と思い始めた。それが今週のこと。

そうすると不思議なもので、「さて、何しよう」のあとに続く、「何」かにつながる出来事が目に見えて起こった。いつもはふとした瞬間にぱっと思いつく、ということが多いのに、今週はなんだかもう雷のようなインパクトでわたしのところにやってきた。

振り返ると、「一人では、生きてゆけない」は内なる祈りの展示、「Blessing」は誰かへ向けた祈りの展示だったと思うのだけど、その制作と展示の工程を経て感じたのは、誰かを励ましたり、寄り添ったり、心を動かしたりするためには、まず自分自身を愛することが大切だということだった。今まで、「誰かのために」と思いながらも思うように届けられなかったのは、なにより自分が自分のことを愛し、受け入れることができなかったからだと。

とはいえ簡単に自分を変えられないままひと月がたとうとする頃、前述の雷に打たれた。打ち抜かれた。おいしい食事を終えたあと、夜の表参道に自己肯定感の低さを置いていこうと決めた。「明日から変わる」と心の中で誓った。

モードが変わると、いままで見えなかったことが見えてくる。本当は気になって仕方なかったのに、自分にはできないかもと思って見ないようにしていたことが目の前にありありと姿をあらわす。「呪い」は、かかっているときにはわからない。解けて初めてわかる。もう戻らない。血が、わきたっているのを感じた。

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