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生きて作ること

ZINE『花と言葉』が無事入稿でき、個展のDMも手配が済んで、これから作品の整理と制作をつめていくところ。

今年の春、東京での個展が中止になってからこの方、燃やす薪の量が減っているなーと感じている。仕事は変わらずやっているのだけど、どうも心に熱がチャージされていかない感じがある。いつもなら休んでいるあいだにふつふつと心が熱くなってくるはずが、どこかに穴が開いていて、生まれてくる熱が外に流れ出していくような感覚がある。

そうなってくると、普段の生活、暮らしに焦点が合ってくる。いままでは個展=ハレだったのが、ハレとケのあいだの日常の延長線上のように思えてきて、その新しい視点でどう個展を作るかを考えるようになった。

ある社会や環境のなかで暮らしているかぎり、自分がどう社会や自身と向き合っているかは、意識しなくても個展のあり方や仕事に反映される。だから制作し続けることがおもしろいし、個展をし続けることに意味があるのだろうと感じる。

以前のように、個展がハレとイコールであると考えるなら、心も体も健康でゆるぎなく一心に制作に取り組めることこそが善であると思えるし、その成果物がゆるぎなく完璧でないときは苦しい。

けれど、日々暮らしていて万全な状態の方が少ない。心はゆらぐし、しあわせに包まれる日もあれば予期せぬ悲しみに暮れるときもある。

そのときそのときの自分の人生や自分から見た社会の姿を、ゆらいでいるなかのある瞬間として作品に留めておくことにこそ意味があるのだろうと思う。できるだけ誠実に、純度の高いままに、そのとき持てるだけの熱をこめて。

そういえば前の展示のときにも同じようなことを考えていた気がする。けれど特に今回は抗いようのないものとともに暮らすなかでそのことをさらに強く感じている。そしてそれはきっと同じ時代を生きる多くのひとが感じていることなのではないかと想像すると、どこか心が軽くなるような気がする。

いつもお読みいただきありがとうございます。いただいたサポートは、これからの作品作りに使いたいと思います。