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2018年の言葉を掘り起こす

海開きの前の日、月が出た。

わたしはひざまでズボンをたくしあげ、寄せる波に足をひたした。灯台の光が照らす先に、青い魚がぬらりと腹を見せて飛んでいる。5匹まで数えたところで、すぐうしろに人が立っていることに気づいた。さっきまで見ていた魚のようにぬらぬらとにぶく光っている。


その男は一歩ずつ海へ近づき、月の光を吸い込みながらさらにまぶしく光り始める。光が、こちらを向いて「来るか?」と聞くので、「行かない」と答える。海の上、地平線上を一列に光がともる。男は青い魚になって、海へと帰っていった。

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データを整理していたら2018年に書いた言葉があらわれた。『Letters』のときのように、自分が書いたことをいったん忘れてしまうともう言葉は別のひとのもの。

言葉を読み、その情景を思い浮かべてぞっとした。短編の物語を書くべく構想を練っていて、そのエッセンスをまとめたものだった。

ああ、こんなことはお金にならないことであろう。けれど大いなる価値があることでもある。

いつもお読みいただきありがとうございます。いただいたサポートは、これからの作品作りに使いたいと思います。