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デザイン組織づくりの失敗あるあるエピソード

いくつかの事業会社でインハウスのデザイン組織の立ち上げやマネジメントをしてきた中で、私自身の経験からやめた方が良いと感じたこと、やりがち、直面しがちなデザイナーの組織づくりのあるあるエピソードをご紹介します。

あるあるエピソード1:
デザイナーの手柄、評価はどのぐらいか問題

インハウスでサービスを作っていると、ディレクターやマーケター、PdM、エンジニア、営業、CSなど、役割や専門性が異なる複数人で一緒にサービスを作っていくことになります。
取り組みの結果、売上が伸びた、CVRが上がったとします。
そのときに、これは誰の評価につけるべきなのか、という疑問が出てくることはありませんか?
企画者の成果?いやでも、企画を具現化したのはデザイナーだよね?市場の反応がもっとも良いタイミングでリリースできたのはエンジニアのおかげ?などなど、デザイナーの評価の付け方や最終評価者である経営陣へのプレゼンテーションの在り方に頭を悩ませたことがありました。

デザイナー評価でやめた方が良いこと

  1. スキルに偏った評価制度

  2. 対応量でデザイナーの価値を表すこと

  3. デザイナーの成果を誇張すること

スキルに偏った評価制度

デザイナーは手に職の世界。
専門性やスキルを評価の参考にすることは間違いではありません。
ただし、スキルを活かしてどんな結果を出したのかが重要です。

スキルは昔取った杵柄では意味がなく、活かせているのかどうか、活かした結果、何を成し得たのかが評価ポイントであるべきです。

スキルに偏ったデザイナーの評価制度を作ってしまったことがありますが、その結果起きたことは組織や事業が目指す方向と、デザイナーが向いている方向の乖離でした。
とても悪い極端な言い方をすると、
「私たちは素晴らしいデザインができます、でも、事業のKPIや業績とは無関係で、事業がうまくいかなくても私たちは専門家として評価されるべきです」というスタンスが生まれやすい状態になってしまったのです。
成果のはかり方は工夫するとしても、デザイナーの評価は成果ベースで行うべきです。

対応量でデザイナーの価値を表すこと

とあるデザインマネージャーの方が、デザイナーの評価制度を作ったというので、詳しく聞いてみたところ、対応量を業務委託費用に換算して経営者にプレゼンしようと思う、というものでした。
おそらく、どうにかして数値化したもので評価を組み立てたかったのだろうと思いますが、これは事業会社のインハウスデザイン組織の評価制度としては、本質からずれた制度だな、と感じました。

理由は2つあります。
100個やって100点をとるのではなく、2個で80点をとるべき、という話が一つ。
加えて、ゴールが対応量というのは自社サービスのデザイナーとしては無責任だなぁと思います。
もちろん、作業的なお仕事も中にはありますから、その文脈においては良いのですが、サービスやプロジェクトのグロースを推進することを期待しているメンバーに対応量を求めるのはリスクしかありません。
たくさん手を動かして努力できる人をリスペクトしたり、偉いと思うのは良い。でもそれを評価制度にするべきではありません。
極端な例ですが、週の半分昼寝していたとしても、売上を大きく伸ばす、期待していた成果を出せれば良いと思っています。
チームワークは守る前提ですが。

本質的な取り組みに絞ることで、手数を少なく成果を出せるチームをつくることもマネージャーの役割の一つです。
結果ではなく対応量を求めるマネージャーの組織は自転車操業になりやすく長期的には疲弊していきます。
あのリーダーの下はしんどいから嫌、なんて言われてしまう可能性すらあります。

デザイナーの成果を誇張すること

デザインマネージャーとして、デザイン組織の Missionを言語化する際、表現に悩んだことがありました。
その時に、他社のデザインマネージャーの方から、なるほど!というエピソードを伺いました。
それは、デザイナーは成果を最大化する、という言葉でした。
何かをより良くするという、デザイン活動の実態に嘘偽りのない表現だと感じました。
当時、デザインの力で売上は上がると言えるのか、数字で表現しづらい印象改善はどう文脈に盛り込めば良いか、などの答えを探していましたが、成果の最大化、というワードは私が悩んでいた点をシンプル人間解決してくれました。

最近は、デザイナーが企画して、デザインして、要求仕様を定義した案件でKPIが大幅に改善できた、という実績が増えてきましたが、それでもデザイナーだけの手柄だとは到底思えません。
言い出しっぺであり、具現化からリリースまでの旗振りも務めている場合は厚めに評価しますが、基本的には言い出しっぺのアイデアに共感したり賛同して、それぞれがそれぞれの強みを活かして前に進める努力をしたおかげ、という前提で見ています。
その上で、貢献度の伸び方で評価のバランスを考えています。
前期に比べて同じ貢献度なら、すでに評価で加味されているはず。前期に比べて貢献度が増している場合は、加点評価する、というモデルを下敷きにしながら調整するイメージです。

この考えにたどり着くには、自分の視座をデザイン組織のリーダーではなく、事業のグロースを担うデザイン組織のリーダー、という事業視座に引き上げる必要がありました。

私は現在、プロジェクト内マトリクス組織の中で、デザインマネージャーの役割と、事業統括としての役割を兼任しています。
兼任は負荷が高いのでは、と心配されたこともありましたが、統括としてプランナーやマーケター、エンジニアをリードする役割を担ったことで、デザイナーという枠が良い意味で薄くなり、事業視座で皆さんの活動を観察できるようになりました。

あるあるエピソード2:
実践を伴わない知識共有が成果に繋がらない問題

デザインに限りませんが、専門書や有識者のsnsなどで、専門的な知識を手軽に入手できます。
そして、情報発信もとても手軽に行えるようになりました。
そんな背景もあってか、デザイナーの組織を強くしていこうという文脈でメンバーと話していると、おすすめの書籍共有や書籍やセミナー、有識者の発信情報をチーム内に共有するのはどう?といった提案がメンバーから上がりがちです。

時間に余裕があり、どうしてもやりたいなら止めません。
が、私の経験では「やってる感」は出せても、本質的な効果につながることは、まずなかったと感じています。

なぜかというと、得た知識を実践もせず、頭でっかちになりやすいからです。
得た知識を自分の仕事でもやってみることで、初めて何が大事なのか、どこが難しいのか、どうすれば活かせるのかがわかるのです。
自分の時間と労力をかけ、チームメンバーにもその情報を読むことを強いるなら、実践もして、どうだったのかを共有するべきです。

まとめ

お読みいただき、ありがとうございます。
最近そういえば、と思い出した内容を記載してみました。
また思い出したら記事を書こうと思います。