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フランス日記:12月7日「壁紙の張り替え」

フランスでは18世紀、19世記の古い建物に改築に改築を重ねて今も人が住んでいる。現在、日本も古い住宅のリノベーションがちょっとしたムーブメントとなっているが、フランスではその習慣の歴史が日本よりも長く、住民自ら行うのが当たり前のようだ。賃貸住宅であっても住民は当たり前に壁紙を張り替えたりするらしい。(マダムから「日本人はどうしてリノベーションを自分でしないの? その方が安く済むのよ!」と言われてなんとも答えられなかった。みんな忙しいし難しいからだと思うが)

今日はマダムのお友達のアルゼンティーナ(アルゼンチン出身の女性)のお宅の壁紙の貼り替えをマダムが手伝いに行くと言うので、同行させてもらった。

壁の寸法に合わせて壁紙(アルゼンチンの国旗の色を思わせる優しくて爽やかなブルーの壁紙だった)の長さを測って切るのだが、寸法の測り方や貼り方が少々おおざっぱに見えてしまい「本当に上手に貼れるのだろうか……」と心配だったのだが、5時間かけて見事に部屋の壁が綺麗に張り変わった!
壁紙を綺麗に貼るなんて素人には難しいのではないかと思っていたが、難しいことでも、頑張ればなんとなく形になるもんなんだなと人生の教訓になった。

この女性にはコメディアンの養成所に通っている息子さんがいる。私たちが作業をしているときにひっそりとどこかから帰宅したのだが、母親とマダムと見知らぬ東洋人が小さなアパルトマンの中を絶えず往来してるせいで、彼は居場所がなく(女性の寝室へは彼の部屋を経由しないと行き来ができない作りだった)1時間ほどヘッドホンで音楽を聴きながらベットの上で小さくなっていたがどこかへ出かけてしまった。

息子氏の部屋の扉の端に、床と並行にひかれた線と日付がいくつもあった。もしかしてと思って女性に、これは息子氏の身長を記録したものかどうか尋ねると「そうなの。彼が小さい時のね」とのことだった。この「身長を記した日付と線」は世界中どこの家にもあるんだろうなと思った。私の実家にもある。口数が少なく大人しそうな彼だったが、小さい頃は母親とこの部屋で「こんなに大きくなったよ!」などと言いながら身長を記録していたのかと思うと微笑ましく、ちょっと切ない気がした。最後の計測日から10年ほど経っており、彼の身長は今ではその線のところから20センチほど伸びた。全てのことがそうだと思うが、これが最後だなんて誰も思わずにその習慣を終えて思い出になってしまうのだ。

今週、マダムと一緒に夕飯にハンバーガーを作って食べた。マダム特製のハンバーガーはチーズを入れず、代わりにオムレツを挟む。
マダムは「息子と娘も好きだったのよ」と言っていた。この手作りハンバーガーを最後に息子と娘と3人で食べた時もこれが最後だなんて思わなかったんだろうなぁと思った。

マダムは私の父親や母親と同世代なので、マダムと過ごしていると自分の母親もこんなことを考えているのかなぁと思わされることがとても多い。


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