散歩_ムッシュ

フランス日記:番外編「散歩中に出会ったムッシュたち」

この日記はモディリアーニと妻・ジャンヌの番地観光をしている際のおまけエピソードである。

ジャンヌの亡くなったアミヨット通りを目指して、パンテオン近くの通りキョロキョロしながらを歩いているとこんな建物を見つける。


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お分かりいただけるだろうか。入り口の壁の素材がつぎはぎのように異なっている。明らかな改築の形跡だ。めずらしい!と思いそそくさに写真におさめ、他人の家という気まずさがあったのでさっさとその場を立ち去ろうとした。するとこの家に住んでいると思われる50〜60代のムッシュに声をかけられる。

「中が見たいの?」
「いえいえ。大丈夫です。写真が撮りたかっただけで…」
「いいよいいよ!入っておいで!」

となんと建物の中に入れていただくことができた(!)

▼エントランス部分。奥の扉は入り口の扉

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▼階段の脇の奥へ続く通路を進むと…

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▼小さな住居があった!

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写真を撮ってもいいですか?とムッシュに聞いたところ「もちろん!」と快く了承していただけた。
パリの建物は基本的に同じぐらいの高さで揃えられているので、このようなちんまりした住居は非常に珍しいのではないだろうか?
中を見学させてくれたムッシュに感謝である。(ちなみにそのムッシュは欧米男性が最もカッコよく見える(と個人的には思っている)太腿あたりまでの丈のコートを着て、知的な雰囲気を漂わせておりたいへん素敵な感じであった。キュンとした)

知的なムッシュに別れ際に「Bon promener」(よいお散歩を)と言われ、ほくほくした気持ちで散歩を続ける。

さっきの古い家を見つけたように、キョロキョロと歩いていたからだろうか。70〜80代のムッシュに「何か探しているの?」と10メートルぐらい離れたところから声をかけられる。「いえいえ大丈夫です!」と答えたところ「僕は君みたいな困っている学生がいないかこの辺りを見回っているんだよ」とのことを英語で言われる(散歩をしていたパンテオンの辺りは学生街である)。
ちなみにフランス人は日本人のように英語を話すのが苦手で、年配の人であればあるほどあまり話したがらないようなのだが、にもかかわらず英語で積極的に話しかけてくるおじいちゃんというのがたまにいて、そういう人は大抵ナンパ目的だ。このおじいちゃんからは唐突に「今夜君をディナーに招待したいんだ」と言われたのだが、そこは言葉が分からないふりをしてとぼけておいた。断れなれているのか特に残念そうな様子もなく、老ムッシュからは最後に「お別れに手にキスをさせておくれ」とのお願いがあった。

オペラの中に「お手をどうぞ」と男性が女性の手を取ってナンパするシーンがあるのだが(『ドン・ジョバンニ』のツェルリーナとドン・ジョヴァンニの二重唱「Là ci darem la mano」や『ファウスト』のマルグリートとファウストとの出会いのシーン)21世紀になっても健在なんだなぁとちょっと感心した。

面白い出来事だった。二人のムッシュに感謝である。

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