深夜のコンビニにて
最寄りのコンビニの出入り口のすぐ傍で、別れ話なのか喧嘩なのか揉めているカップルが居た。
彼女の方は号泣していて、まさしく愁嘆場だ。
所詮他人事、いつもなら「大変ですね」と横目にしながら通り過ぎるところだが、そうもいかないわけがあった。
明日飲む麦茶を切らしてしまっていた。
こちらとしても明日飲む麦茶がないのは一大事なので、意を決してコンビニに突入することにした。
カップルはコンビニの入り口すぐ横で揉めていたので、一直線に揉めているカップルに向かっていくような形になってしまった。
「どうして!!もうやだよ!!!」
叫ぶ彼女。宥めようとする彼。
すみませんがちょっと通りますねという表情を作りながら横切るわたし。
明らかな不純物が紛れ込んでいる状態だった。
ドラマ撮影ならカットの声とともに確実に没テイクとなるところだが、生憎現実だったのでカットの声がかかることはなく、かくしてわたしは無事にコンビニに入店したのだった。
無事に麦茶を買い込みコンビニから出ると、もうカップルはいなくなっていた。
10分もかかっていなかったと思うが、空気を読まずカップルめがけて突っ込んでくる女が怖かったのかもしれない。
そうそう、こんな所で揉めてないで、場所を変えたほうがいいよ。
とコンビニの駐車場を出るとそこに同じカップルが居た。
「もうやだよ…うっうっ…うえぇ…」
こっちの台詞だよ。
まさか1日に2回「すみませんがちょっと通りますね」の顔をすることになるとはね。
一生懸命麻雀BARで働いた一日の締めくくりにレアな体験をしてしまったが、約束してほしい。
別れ話や喧嘩はコンビニの前でするな。
特にわたしの家の最寄りでは。
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