モーセの話に込められた意味
先日旧約聖書のモーセのお話に触れたので、それにまつわる作品を。
フィレンツェ中心としたトスカーナ大公国の君主だったコジモ・デ・メディチ1世縁の作品は政治的意図が込められていましたが、純粋にキリスト教の教えを伝える作品もあります。
今日はフィレンツェのお隣、シエナの大聖堂の床の装飾から。
ドメニコ・ベッカフーミ 「ホルブ山の岩から水を湧き出させるモーセ」 1531年頃 シエナ大聖堂
モーセはエジプトでピラミッドの建設に従事させられていたイスラエルの民を率いて、かつて彼らの御先祖様達が暮らしていた土地に帰ろうとした人です。
長旅の途中、喉の渇きを訴えた民達はモーセに不満をぶつけます。なぜ、自分達をこんな苦しい度に連れ出したのか、エジプトで奴隷だった時の方が食事をもらえていたのに、など。
そこで彼は神様に言われた通り、ホレブ山の岩を杖で叩き水を与えます。民は喜び、モーセに感謝を伝えたのでした。
キリスト教徒にとってこのエピソードに出てくる岩はキリストを、水は生きる意欲と救い、転じてキリスト教の教えによる救済を意味します。キリスト教の母体となったユダヤ教の話をうまく取り入れ、キリスト教信者へのメッセージにしています。
繊細な色のニュアンスから一見モノクロ絵画に見えますが、大理石の嵌め石細工です。余分な色を使わず、大部分にグレーと緑がかった色の大理石だけをうまく利用しています。
この場面は祭壇の側にあり、夏から秋にかけてにしか公開されません。今年はまず6月27日から7月末まで、後半は8月半ばから10月半ばまで公開されます。
毎年全国ニュースで「イタリアの至宝を公開」と取り上げられる程の名作です。
この時期にシエナに寄る方はぜひご覧ください。
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