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~ Last Friday Night その1 ~

※7年くらい前にFBで書いていたものが出て来た。ここに記録しておこうと思う。


最近、娘が聴き出したKaty Perry。Last Friday Night という曲で、彼女は「イケてない」女の子を演じている。その姿は、髪はぼうぼう、鼈甲色の大きなメガネ、暑苦しいスモークピンクのタートルニット、極め付きは、口から顔の外の飛び出している針金ワイヤー付の歯列矯正装具。確かに、超イケてない。

これ、私も付けてたんだ。とつぶやきながら、娘の眺める画面から、つい目をそらしてしまった。

この装具の他に、一つ一つの歯に銀色がぎらぎら張り付くタイプ、歯がない歯茎だけのようなものにワイヤーがついている、取り外し可能なタイプ、ミニ輪ゴムを上下左右の器具にひっかけて歯を引っ張るタイプ、寝ている間に顎を引っ張るために付けるヘッドギア。歯列矯正の総合商社や!(彦摩呂風に)と自慢?したくなるようなフルコース。小学校4年生から中学生の間、付け続けた。

やっと終わった、と思った頃に、健康診断の肺のレントゲン撮影で見つかった脊椎側弯症。ミルウォーキー装具と呼ばれる、上半身全体を、鉄鋼とプラスチックと皮革でできた中世のコルセットか、悪く言えば拷問器具のようなもので、それを24時間付けていないと、将来歩けなくなったり、子どもが産めなくなる可能性があります、という診断。これを身体に合わせてテーラーメイドするための作業は、ティーンエイジャーの女子の羞恥心を完全に無視した、地獄のようなものだった。

大学病院の学生だかインターンだか知らないが、中途半端な大人子どもみたいな人たちが、それらしくボードにノートパッドを挟んで小脇に抱えて7-8人で円陣を組んでいる真ん中に立たされ、パンツを中途半端にずり下げられた状態になり、技師の中年男性二人が、手に石膏のようなものを取って、上半身の全ての箇所にペタペタと塗り付けていく。そのまま固まるまで動かないで立っててねー、と。

さらに、レントゲン室までの移動時は、半裸のまま、順番待ちの患者の前を何度も往復。戻ってくると、飾りだけのカーテンがいつも解放された状態の診察。その結果、出来上がった「装具」を身に付けると、星飛雄馬の“大リーグボール養成ギプス”状態。あちこちに青あざや皮膚の擦り切れ、鉄鋼部分が飛び出し、上から着る洋服は全て何回かで穴が開く始末。制服のブレザーも継ぎ接ぎし、何枚も買い替えた。装着したまま椅子に座ると、恥骨に突き刺さり、痛みが走る。床に落としたものは、自分で拾うこともままならない。満員電車で身体が触れ合った人は、驚いて凝視する。この固い身体はなんだ?と。

Last Friday Nightの映像が流れた瞬間に、歯列矯正の小学校高学年、そして、この姿で中学生活を送るのだー、と絶望的な気持ちになっていたことまでを、一気に思い出した。

その2につづくー

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