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第百十六話:労働局ボスとの決戦

 2012年にタンザニアに来てから作り上げた人脈を遡り、関係が近い人から連絡をとりまくる日々、警察からは毎日のように電話が来るし、かなりのストレスに体重も減った。先が見えず毎日のように泣いていたが、息子を毎晩寝かしつけてから、自分しかいないこの子のためにまだ頑張らなくては!死んではいかん!と寝顔を見ながら鼓舞する日々だった。

 そして、知り合いから政府関係に強い弁護士を紹介された。
労働局のボスとすでに何度かやりあったことがあり、名前を出したら「あいつは汚職まみれで個人的に嫌いだから、是非やりたい」とのことだった。この弁護士の言い分としては、「そもそもオフィスに呼び出しておいて、働いているというのはフェアじゃない。働いていなかったということを証明できれば、勝てる。汚職防止機関に呼び出して、こらしめてやる。」とのこと。
 そもそも穏便に事を運びたい私にしてみれば、全く逆の立場を貫く弁護士だったが、あまりの自信と勢いに負けて仕事を依頼することとなった。 

 働いていなかったことを証明するために色々な機関に出向いて、証拠をかき集め、ファイルを作成した。それを弁護士に持っていき、数週間後に例のボスは汚職防止機関の査問委員会に呼ばれた。弁護士は「こうやってプレッシャーをかけることにより、この件を取り下げる」という目論見だった。
 かなり労働局側が焦っているのが分かったし、警察からも「誰が汚職防止機関に話を持っていったんだ。話が相当でかくなってるぞ。」と電話が何度もあった。しかし、労働局のボスはなかなか取り下げてはくれない。 
 弁護士からは、これは心理戦だからと言われたが、プレッシャーに弱い私のメンタルは崩壊している。こんなことがまだ何週間も続くなんて耐えられないことだった。

 そして、私は他の方法で問題を解決できないか再度探り始めた。
結果として方法は2つ。知り合いの警察官が自分の上司に依頼し、その上司が労働局のボスとつながっているから話を通してもらう方法。もう1つは他の州の労働局のトップを紹介してもらい、そこから同じ同僚として話を通してもらう方法だった。信頼している人からの紹介のほうが安心できるという理由で後者を選び、こちらも同時進行で話をすすめることとなった。
 
 そんな中、再度夫から連絡があった。どうやら、警察署に呼び出され話を聞かれたらしく、その際に汚職防止機関に行ったのはお前だろうと責められたらしかった。

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