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第百二十五話:一緒にジムに通い始める

 ジェームズはおそらく120キロ以上はあるような巨体の持ち主で、ハグしても私の腕が回らないほど太っていたし大きかった。長い年月を経て再会したときもその体のサイズは変わらずで、そのせいかコロナにかかったときにかなり重症化した。
 そのことで、自分自身やばいと感じたのかダイエットをすると言い出した。大体のことは有言実行に至らない人なのを知っていたので、まあ今回も口だけだろうと思って軽く流していた。
 しかし、今回はどうやら本気だったらしく、友人の住んでいるアパートにジムが併設されており誰も使ってないから使わせてもらうと言う。そこで、仕事の後一緒にワークアウトをしないか、と誘われたのだった。
 正直、あまりジムに行くことは乗り気ではなかったが、ジェームズと一緒の時間を過ごせるという不純な動機で参加することにした。

 太っている割には、色々と有名なトレーナーからトレーニングを受けた経験があるらしく、クロスフィット系のトレーニングを教えてくれた。学生の頃は陸上部だったのもあり、ジムで走ったことはあったけれど、ダンベルやバーベルなどはほとんど触ったことがないレベルだった私は、全てのトレーニングが新鮮だった。
 ジェームズは私がきついトレーニングにすぐに音を上げると思っていたようだった。だが、休むことなく決められたワークアウトメニューを黙々とこなすのを見て、驚き褒めてくれた。
 最初はただジェームズと少しでも時間を過ごしたいと始めたトレーニングだったが、少しずつ重いバーベルを上げられるようになり、楽しさとやりがいを感じられるようになり、また終わった後の爽快感の虜になっていった。

 トレーニングを始めて数か月経ち、腕が痛いとか忙しい等の理由でジェームズはどんどんジムに顔を出さなくなってきた。ただ、私の中ではすでに生活の一部となっていたため、そのまま私は一人で続けた。それと同時にアパート併設のジムではなく、ちゃんとした設備の整ったジムに移動した。
 ジェームズは2-3度そのジムへ顔を出したが、ジムの会費を払う余裕がないと言って結局来なくなってしまった。

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