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第百三十二話:辛く耐える恋愛からの脱却

 その次の日も、また話かけられた。
名前を聞かれたので、彼の名前も聞いたのだが、初めて聞く馴染みのない名前だったために、ジムを出る前に忘れてしまっていた。
 それからも、挨拶したり、話をしたり、ゆっくりと時が流れた。
頻繁に話かけられるようになって、どんどん彼の存在が気になっている自分がいた。
 「恋をするって本当はこんなにドキドキして、楽しいものなんだ。」タンザニアに来て約10年、思い返せば辛く耐える恋愛をしてきた自分にとって、毎日が桁違いに楽しくなるそんな出会いだった。

 ジェームズのことで泣くことは、大分減り、約束をすっぽかされても精神的なダメージをうけることが減ってきていた。家に行くと言いながら来ない日が続き、気付けば6か月以上が経過していた。その間、1か月に1-2回カフェで会ったが、オンラインポーカーに熱中しているジェームズの横で、私が独り言を言っているような状態。これは、そもそも付き合っていると呼ぶのか、かなり疑問な状態で、私が連絡をするのをやめたら、自然消滅するのではという感じでもあった。

 毎日が楽しく過ごせるようになり、ジェームズへの執着がなくなったため、約束を破られても、電話やメッセージで責めることもしなくなった。そんなことが続き、私の変化に気付き始めたのか、急にデートに誘われた。ちょうど土曜日の仕事が終わり、ジムに行く前の時間だったのだが、一応会うことにした。
 いつものカフェに着くと、珍しくジェームズがすでに来ていた。
そして、最近何か変わったことがあったかと聞かれた。今まではジェームズの反応を気にして本音を言うことができなかった自分だったが、この時は言いたいことをすべて言い尽くした。

「こっちが話をしているのに、常に携帯をいじり、オンラインポーカーをしていて不愉快、約束は平気で破り、デートらしいデートもしていない、6か月以上セックスはしていない、それでいて会いたかったらカジノに来い?今までで一番最悪な彼氏だよ!それでいて、人の気持ちをわかろうともしない、心がないロボットみたい!」

 言いたいことを言い尽くした私にジェームズはビックリしていた。
今まで、ただただ言われたことを頷いて聞いてきた。何か意見をしても、英語がネイティブであるジェームズに言い負かされたら、もうそれで終わり。そんな関係からの大きな一歩だった。

 まだ茫然としているジェームズに、もうジムに行く時間だからと言って、私は颯爽とカフェを後にした。すごいすっきりとした気分だった。

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