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第百十四話:お金の要求

 もとからお金の要求をされることは予想していた訳だが、思っていたより大金を要求されて、頭をかかえてしまった。ここでお金を払っても、今日留置所に入れられないだけで、この問題が解決するわけではない。
労働局とこれから交渉することになる訳だが、そちらのほうが高額を支払うことになるのは目に見えていた。そのためにも余計な出費は抑えておきたい。マイケルがまずは値段交渉し、最後に私が最終の値段交渉をした。
最初の言い値の半額ほどになったところで、もう無理なのだろうなと感じ要求を呑むこととなった。

 とはいえ、貴重品を全部置いていけと言われたのでお金は全く持っていない状態。また同じ警察官3人と車に乗ってオフィスに戻ることになった。お金が手に入ることが分かっているからか、さっきとは打って変わって世間話をがんがんこちらに振ってきて楽しそうな警察官達。
あまりの陽気さに怒りではなく呆れつつ、この人たちとは問題が解決するまで長い付き合いになるだろうから、揉めてはいけないなと全力で良い対応を心がけたのだった。
 オフィスに到着し、お金を下ろして渡し警察官は戻っていった。
少しほっとして、マイケルとずっと食べれていなかった御飯を食べて、時間も遅かったので、この日は帰宅することになった。

 やっと辿り着いた家で、安堵の気持ちが抑えきれず、まだ何も知らないお手伝いさんにハグをして号泣した。キョトンとした顔で見ている息子と何があったのか状況が分からないお手伝いさん。抱きしめてくれながら、何があったの?と聞いてきた。
 息子が7か月くらいの頃から住み込みで働いてくれている彼女とは、とても良い関係を築けていて、夫と別居してからは特に心強い存在でいてくれている。お手伝いさんというよりは、友達というか妹というかそんな存在だ。
 今日何があったのかひと通り話すと絶句していたが、大変だったねとまた抱きしめてくれた。
 
 長い一日が終わった。でも、これから数か月続くことになる闘いはまだ始まったばっかりだった。

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