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第百二十六話:お金の無心

 ジムの会費を払えないくらいお金に困っているので、私にもお金を貸して欲しいと言ってくるようになった。まさか、アメリカ人の彼氏にまでお金を無心されると思っておらず、今までのお金にまつわる苦労を思い出し悲しくなった。
 ジェームズは、人の気持ちをまったく考えずに思ってることをストレートに言う人間(本人もそう公言していた)、かなりの勢いでしかもしつこくお金を要求してくるので、毎回折れて貸してしまっていた。でも毎回、こういうときには連絡をまめに取ってきてと不信感は生まれていた。
 それを感じ取ったのか、自分の使っていない車と書類を持ってきて、「これを担保に持っておけ、売れたら借りてるお金をそこから差し引いていいから!だからお前は絶対損しない!」と言い、半ば強引に車を置いていったのだった。
 私は好きという気持ちがあり、困っているなら力になりたいという思いから貸してしまっただけで、彼のその言い分に納得したわけではなかった。そんな私の葛藤など知るよしもないジェームズは、担保があるんだからと調子に乗ってどんどんお金を要求してきた。

 私もお金に余裕がある訳でないのにと、電話がある度にまたお金を要求されるのかと身構える自分がいた。そして、ネガティブモードに入るたびにお金だけは返してもらわなきゃと、催促し軽くあしらわれることが続いた。

 そのころ、私は息子が起きる前の早朝4時頃に起きてオンラインで講座を受け、仕事後ジムに行き、そして夜はオンラインで少しでも家計の足しになればと副業をしていた。忙しくしていれば、ジェームズのことを考えなくて済むという考えもあった。おそらく精神的にも体力的にも相当疲れていた。
 
 そのためか体調を崩し回復までに時間がかかることが続いた。今まで何年も風邪とも無縁だったため、ダメージは大きかった。また改めて自分が倒れてしまっては、会社も子育ても全てが回らなくなってしまうという事実を突きつけられたのだった。

 そしてまた、私がジェームズを金銭的にもまたその他のこと(彼のビジネスで使う資料等をエクセルが不得意な彼に代わって、作成してあげていた)を最大限サポートしていても、私が倒れても彼は助けてくれないという悲しい現実を知ることになった。
 事実心配はして連絡はくれたものの、俺が行ってもべつに風邪や病気が治るわけじゃないと言って、一度もお見舞いに来てくれることはなかった。
 

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