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第百十二話:警察署へ連行される

 有無を言わさずパスポートを取り上げられた後、体の大きい警察官と労働局職員に両側を挟まれて、車に乗せられて警察署へ連行された。スタッフのマイケルも着いてきてくれたのが何よりもの救いではあった。
 道中で知り合いの弁護士と労働許可証の手続きをしてくれていたコンサル会社の担当にはメッセージを送っておいた。そしてなんと夫からも偶然なのかわざとなのかは分からないが「オフィスがもう使えないというのなら、自分のオフィス家具を今から取りにいきたい」とメッセージがあった。「お前のせいで逮捕されたから、オフィスには入れない」と返信すると、「浮気をしている奴らに助けてもらえればいいじゃないか」と暴言を吐かれたのだった。
 
 警察署に着いてから、調書を取られた。一通り、こうなったいきさつを話していると、聞いていた年配の警察官が「じゃあ、君の夫が労働局の職員を連れてきたの?」とびっくりしている。ただ単に労働局の職員が不法就労しているところに出くわし逮捕されたと思っていたようだった。そして「夫婦の問題は夫婦で解決して欲しいよなあ」とぽつりと言った。子どもはいるのかと聞くので、1歳の息子がいると答えた。「今日このままだと留置所に入ることになるけど、1歳の子どもがいるお母さんを(内容が内容だけに)拘束するのは躊躇う。そもそも自分の子どもを育ててもらってるのに、そのお母さんを逮捕させるってどういうことだ!」と怒りながら、マイケルに保証人になるために必要な書類の準備をするように指示をし出した。

 そして私には、労働局のボス(私を非難した男性職員が実は州のトップだった)とここから出たらすぐに話をして裁判などになる前に解決するように念を押した。少し話が分かってくれる人が警察署にいてくれたことにホッとしたのも束の間、「俺はこれから病院に行かないといけないから」と言って、調書をまだ取られている私を残して彼は帰ってしまったのだった。

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