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ゲーム翻訳者を目指す人におススメしたいゲーム

 ゲーム翻訳を始めるとおそらくぶち当たるのは、翻訳の自由度という壁。原文に書いてあることをそのまま日本語にすると違和感がハンパない、もしくはそもそも成り立たない——そのようなテキストに出くわすのは日常茶飯事です。そんな時、翻訳者はどこまで自由に表現できるのでしょうか。私自身いまでもとても悩みますし、他の翻訳者さんとお話しても、なかなか悩ましい問題であることがうかがえます。
 よく言われることですが、重要なのは「この作者の母国語が日本語ならどう書くだろうか」、「日本語ではどのように表現するのが自然か」だと思います。しかし言うは易しで、実際にこれらを感覚的につかむには、翻訳の数をこなすことと良質のゲームに数多く触れるのが何よりの方法ですね。
 というわけで、今回は私が過去にゲー翻学習に活かした作品をいくつかご紹介したいと思います。
 

1:『ねじ巻きナイト』

 2011年リリースのこのゲームは、当時駆け出しだった私が最も衝撃を受け、度肝を抜かれた作品です。あまりに自然でユーモラスなテキストのため、まさかこれが翻訳だとは思いもしなかったのです。

ゲーム序盤に出てくる誘拐犯からのメール

 私が思うゲーム翻訳のあるべき姿とは、作り手の意図を十分に汲みつつプレイヤーが最大限に楽しめる文章にすることですが、まさにそれを体現した翻訳作品として、今も私の目標であり続けています。
 もしまだインストール可能でしたら、ぜひともプレイしてみてください。
 

2:『Eastward』

 この作品が素晴らしいということはけっこうあちこちで言っているのですが、なんとこの作品、設定によって英日両方のセリフを同時に見ながらプレイできるのです。

戦慄の(?)設定

 このような仕様は大抵の翻訳者にとってかなりのプレッシャーでしょうし、勇気のいることだと思うのですが、翻訳の質は完璧の一言。極上の翻訳を原文と照らし合わせつつプレイできる、ゲー翻学習に理想的な作品です。 

歌詞にも脱帽

3:『Call of Duty®: Modern Warfare』

 ゲーム翻訳に多い戦争もの。多いとはいえ、得意な人と苦手な人に分かれるジャンルでもあるのではないでしょうか。今回なぜ古い方のModern Warfareを選んだかといいますと、操作がさほど複雑ではなく、私のような鈍臭いプレイヤーでもさくさくプレイしながらFPSの用語やトーンを学べるようにできているからです。『Call of Duty®: WWII』や『Call of Duty®: Black Ops』も楽しいのでおススメです。
 

4:『ドラゴンクエスト8』

 誰もが知る国民的ゲームですね。和製ゲームの、しかも8を選んだ理由は、英訳が非常に凝っていて素晴らしく、しかもとっつきやすいからです。セリフはコミカルでキャラクターに合った訛りなどの工夫が凝らされており、8から新登場のモンスターにも「Chainine」をはじめ愉快な名前がつけられたものがいくつもいます(Chainineは「ワンダーフール」の英語名。チェーンをもったブルドッグなので、chainとcanineをかけたダジャレなのでしょう)。 

Dragon Quest Wiki より

オリジナルが日本語のゲームを英語でプレイしてみるのも、英日翻訳をする際にとても参考になります。

5:『Kingdom Eighties』

 そして最後は宣伝を🙌。今年の10月にリリースされたこのゲームは、架け橋ゲームズの桑原さんが手がけられたユーモアたっぷりのデモ版をベースに私が残りの翻訳を担当し、80年代の死語を織り交ぜつつ、とにかく楽しんでプレイしていただけるよう心掛けた作品です。
 ゲームの紹介と翻訳裏話についてはゲームライターの朝比奈さんがものすごくステキな記事を書いてくださったので、詳しくはそちら(↓)をお読みいただけますと幸いです。

 プレイ動画もとても面白いです。


まとめ

 ゲーム翻訳の学習には、良質な和製ゲームと、高品質な翻訳で定評のある海外作品の両方を、とにかくたくさんプレイするのがおススメです。
 優秀な翻訳者はたくさんいらっしゃるので、気になるゲーム翻訳者さんの作品を何作かピックアップしてプレイするのも良いのではないでしょうか。私自身、楽しみにしている積みゲーがたくさんありまして、年末年始にできるだけプレイしたいと思ってます。
 この記事が、一人でも多くの方のお役に立ちますように。お読みいただき、ありがとうございます🙏。