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IR担当は「メッセンジャー」以上の存在になれるか?

明けましておめでとうございます!SmartHRでファイナンス・IRを担当している森です。

先日、弊社セールスグループの正木さんの以下の記事を読んで、職種は違えど「自分も同じようなことを最近考えるなぁ」と共感する部分がとても多くありました。(正木さん素敵な記事ありがとうございます!)

特に営業担当としての介在価値のエピソードを読んで、色々と考えさせられるものがありました。

というのも普段からIR担当として投資家と向き合う中で、「自分の介在価値」について疑問を持つことがたまにあり、その度にモヤモヤした思いと折り合いをつけながら、これまで仕事に取り組んできたからです。

せっかくの機会なので、IR担当としての価値の出し方やそれに関する悩みを書き綴りたいと思います。ニッチな職種の話ではありますが、お付き合いいただけると嬉しいです。

■これまでの経歴

新卒で入社した会社でIR部に配属されて以降、ずっとファイナンス・IR関連の仕事をしてきました。SmartHRには昨年の3月に入社し、同じく資金調達やIR周りを担当しています。

新卒の頃はIRに関する知識は全くなく、完全にゼロからのスタートでしたが、やってみると自分の肌に合っていることが分かり、今に至るまでIRの仕事を飽きずにやってこれてます。

■IR担当として独り立ちするまで

IRの仕事の一丁目一番地は投資家とのコミュニケーションです。機関投資家やアナリストとの1on1 mtg等のやり取りを通じて、会社の魅力を発信し、投資をしてもらう(=株を買ってもらう)ことがゴールです。

IRに配属されると、まず大量のインプットを行います。会社の事業内容や顧客が抱える課題、事業方針、業績、事業計画、競合、業界のトレンド、マクロ経済の状況など、投資家との会話に必要な知識をインプットします。またIRミーティングに同席しながら、知識を蓄えていきます。

その後はひたすらロープレを行います。部署の先輩や上司に投資家役をやってもらい、質問を投げてもらいます。IRミーティングでは投資家が質問をし、それにIR担当者が回答するというのが基本なので、投資家からのあらゆる質問に過不足なく答えられるようになるまで、ひたすらロープレを重ねます。

ロープレを経てIRミーティングでメインスピーカーとして喋れるようになった段階で、IR担当として独り立ちできたと言えます。

■「そつなく」こなすだけでいいのか?

前職では配属から1年ほど経った頃から投資家とのミーティングを任せてもらえるようになり、2年ほど経つとIRの仕事を「そつなく」こなせてると感じられるようになりました。

しかし、だんだんと「これでいいんだっけ?」という思いが強くなっていきます。

IR担当はその企業を代表して投資家とコミュニケーションを取るため、必然的に「IR担当者の言うこと=会社を代表した意見」になります。また、実際の議論も業績というファクトをベースに進みます。

そうなると、(当たり前ですが)IR担当者個人の考えや意見が入り込む余地はほぼなく、如何に投資家からの質問に正確に答えられるか、如何に会社の方針・戦略を分かりやすく伝達できるかがIR担当としてのスキルとして重要視されます。

このような「企業と投資家を繋ぐ正確なメッセンジャー」としてのスキルを磨けば磨くほど、「自分じゃなきゃいけない理由」「自身の介在価値」みたいなものが、どんどんぼやけていく感じがしていました。

■「正確なメッセンジャー」でいいのかもしれない

以前noteに投稿したのですが、マーケットへの情報発信やミーティングを通じて投資家と良好な関係を築き、ファイナンスを成功させ、会社の成長に貢献することがIRの主目的と私は考えています。

この目的さえ達成できれば、個人の介在価値が感じられるかどうかは取るに足らない問題で、悩む必要の無いことなのかもしれません。

そもそも上場企業だと投資家が自社の株式を買ったかどうかを正確に把握する術はあまり無く、仮に投資してくれたとしても、それは会社やプロダクトが魅力的だからであって、IR担当の力ではありません。

「正確なメッセンジャー」としての役割が求められている中で、個人の介在価値を見出そうとすること自体、矛盾しているかも?とも思ったりします。

■今はどう考えているか

IRを通じて会社の成長に貢献することが最も重要なので、まずは「メッセンジャー」としてのスキルを磨くことに引き続き集中しています。

プロダクトや業績、競合に関する知識を深め、投資家の質問から懸念・疑問を察知し、エクイティ・ストーリーを説得力のある形で伝える。このような投資家とのコミュニケーションを通じて、会社の財務戦略に貢献することが最低限且つ最重要のミッションです。

IR担当個人としてどう価値を出していくかという点については引き続き悩み中ですが、最近ある方向性が見えてきました。

■良きディスカッション相手になる

投資家と面談していると、ごく稀に「森さんはどう思われますか?」と質問されることがあります。IRをやっていて、このように聞かれた時が一番嬉しく感じます。意見や考えを聞かれると、自分をディスカッション相手として見ていただいていると感じることができ、「正確なメッセンジャー」から一段高い存在になれた気がするからです。

最終的に投資判断をするのは投資家であり、IR担当への取材は投資判断を行うための手段です。その取材の際に「メッセンジャー」として聞かれた質問に正確に答えるのはもちろんのこと、「良きディスカッション相手」として投資家の疑問や懸念、考えを察知し、議論を有益な方向に広げていくことができれば、一段高いレベルで投資家の投資判断に貢献できるのではと思っています。

「良きディスカッション相手」かどうかは自分では判断できないことなので、まだまだ手探りな状況が続きますが、しばらくはこの方向性で「メッセンジャー」以上の何かになれるよう頑張っていきたいと思います!

■最後に

誤解の無いように付け加えておくと、決して「メッセンジャー」を否定しているわけではありません。「企業と投資家を繋ぐ正確なメッセンジャー」になることはIR担当として投資家や会社から最低限求められていることであり、そうあり続けるための努力は今後も必要です。

とはいえ「メッセンジャー」以上の何かに価値を見出せた方が、個人のレベルアップにも繋がるし、仕事も面白くなるかなと思って色々考えている最中です。

また新しい考えが出てきたら投稿したいと思います。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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