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「私」が嫌になる 第86回 月刊中山祐次郎

こんにちは、中山祐次郎です。いつもご購読をありがとうございます。

最近、人間というものについて考えています。

みんな、自分の利益が最大になるように、意識的あるいは無意識的に考えて生きているわけじゃないですか。これは間違いない。

仕事選びだって、今やっている仕事だって、人間関係だって、SNSだって、すべて自分のメリットが最大化する方向に向かっていくんですよね。子育てだって、少しでも子供が健やかでいい子に育つように、と自分のメリットを最大化する方向に一生懸命頑張っている。会社に貢献するのは会社が大きくなって安定したり中で評価されて給与が増えたり誉れが上がったりするメリットが上がるからです。

もちろん、「そんなこと考えたこともない」って人は1000人にひとりくらいはいると思います。そういう人は置いておいて、です。

この社会というのは、あまねくみんなの欲望がおしくらまんじゅうのようにひしめいていて、今日はあいつの欲望に負けた、明日は俺がちょっと勝った、あさっては株価が大きく下がったので株をやってる人はだいたい負けた、なんて具合に上がったり下がったりしている、そういう集合体なんです。

そう考えるとどうも末恐ろしい。

こうやって一般化して書いているということは、もちろん私こそが自分の利益を最大化する方向にばかり考えているからです。

たまに、ごくたまに「無私」のような気持ちになることが、ないこともないですよ。私だって。一応医療者の端くれですから。

でも、その「無私」もしっかり疑ってかかり検証を重ねると、やっぱり最後はどこかで自分のメリットにちゃんと繋がっていく。

これを手放すにはどうすればいいでしょうか。

二つの解決策があります。

一つは、「純粋にゲームとして楽しむ」ということ。仕事を、貯金を、家庭運営を、すべてをゲームとしてきちんとコンプリートできるように楽しむ。結果、金が増えようが健康になろうが家族が幸せそうだろうが、そういう一切の報酬から離れて、ただ楽しむ、ということです。

もう一つは、「なにかに帰依する」ということ。神に、推しに、妻に、夫に、受験に、会社に、なんでも良いんですが、全身全霊をもって依存する。帰依とはそういうことです。やりようによっては危険かもしれませんけれど、とにかく自分の存在のすべてをかけて依存する。帰依する。

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