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雨に許される 第91回 月刊中山祐次郎

皆さんこんにちは、中山祐次郎です。

梅雨が明けたというのに、こちら福島の地では豪雨が続いています。スマホにはしょっちゅう大雨洪水警報の知らせが入り、3時間後にはまた解除の知らせが入ることが週に2,3日はあります。残り梅雨、ですね。

先日、radicoというアプリでユーミン(松任谷由実さん)のラジオを聴いていましたら、ユーミンが「私の楽曲には風がつねにモチーフとして入っている」と言っていました。

風。ほほー。

その理由までは言っていませんでしたが、ひるがえって中山のモチーフはなんなのだろうな、と。

ふと思うと、「雨」なんですね。私はどういうわけかずっと雨が好きで、いや雨の日は憂鬱なんですが、好きな傘やカーペンターズの「Rainy days and mondays」聴いたり、窓の外の雨を眺めているのが好きなんですね。雨音も好きで、神経が高ぶって眠れない夜などは安眠アプリの雨音を流して聴いています。

なぜ好きなんだろう。

じっと考えたことがあります。

雨を見ていると、この世の奇跡のような気になるから。空から水が落ちてくるなんて、素敵なことじゃないですか。ホコリでもなく豚でもなく、水が落ちてくるんです。

加えて、雨が降ると何もかもが許されるような気がしてくるんです。汚いビルの壁も、壊れかけた自転車も、曲がった標識も、欺瞞だらけのこの心も。誰が許すのか、それは神様とかなんでしょうか。私は特定の宗教を信じていないのでハッキリしませんが、そういうすべてを超えた存在から許されるような気がします。

もっと言うと、「自分がこの世に存在していることへの違和感」が少し減るようにも感じます。私は、まるでピースの合わないパズルをし続けているような気がして生きているのですが、そのピースたちが雨のせいで溶けて融合していくような、そんな感覚です。あ、誤解のないように申しておきますと、とても幸せですし、かなり満足しているんですよ、日々の生活という点では。嫌な人もあんまりいませんし。ですけど、根源的な生きづらさみたいなものは(もちろん誰しもが持っていると思いますが)私の腹にもしっかりと横たわっている、ということです。

そういう雨に、お礼を言いたいような、貸しを返したいような、そんな気持ちでしょっちゅう小説などに書いているのですね。なんでしょうね、不思議ですが。

みなさんが気になっている自然現象は、どんなものですか。そしてそれは、なぜですか。

ではまた次回、お会いしましょう。

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