「わかってもらいたいお化け」よ、さようなら 第16回 月刊中山祐次郎

こんにちは、中山祐次郎です。

noteがついに文藝春秋とコラボを始めたそうだ。文藝春秋はいまでこそ「週刊文春」という、有名人の秘密を切り売りして儲けるというたいへん結構な雑誌で有名だけれど、もともとは「文藝春秋」という文芸の雑誌で始まった会社である。

菊池寛という作家がいろいろな作家に声をかけ、始まったのである。たしか最初は文藝春秋社は菊池寛の自宅にあったとか。そして大学の同級生である芥川龍之介にちなんで芥川賞を作るなどしたのだった。文藝春秋社は、もともとはそういう文芸の由緒ある会社だ。

その文藝春秋がnoteで記事を配信するという。私は飛びついてこの記事を読んだ(無料部分のみ)。

名優、高倉健が亡くなって五年ほどが経つ。筆者は「その最期を看取った女性が、高倉健の養女である小田貴月さん」だ。「現在は高倉プロモーションの代表取締役を務めている」そうである。法的にはおそらく養子だが、最後の17年をともに過ごした奥さんだろう。

上の記事では、その出会いについて克明に描かれている。たまたま同席したレストランでの出会い。その後、はがきのやりとりを経て高倉健が連絡先を彼女に教え、次第に電話をする仲になっていったこと。そして連日の長時間の電話。女性が仕事で電話が繋がらなくなると、高倉健が怒鳴ったこと、そしてその後謝罪をしたこと。

読んでいて思ったのは、「高倉健は、とにかく小田さんに自分のことを知ってもらいたかったのだな」ということ。だから連日電話をしたのだろう。そして、その気持ちの奥には、「自分をわかってもらいたい」という欲望があったのだろうと思った。そう、こんな言葉からも。

〈いつか一緒に住みたいと思う女性に出会ったら、ぼくのすべてを夜通し話してもいいと思うけど……〉


***


僕らは、多かれ少なかれ「自分のことをわかってもらいたい」と欲する。いや、ごまかさずに言おう。僕は、はっきりと自分以外の人に「自分のことをわかってもらいたい」という欲望を持っている。それも、世界中の人にわかってもらえたら嬉しいなと思う。まるで映画「サトラレ」のように、自分の思考が全てダダ漏れでも構わない。人と比べたことはないけれど、きっと平均の1000倍くらいはあるような気がする。

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