どんな時代であっても霜降り明星だけは確実に売れた
「霜降り明星ゲストでどうかな?」
私が仕事場で初めて霜降り明星の名前を出したのは2016年の冬だった。
彼らがM-1グランプリを制する2年ほど前のことである。
初めて彼らを生で見たのは、M-1グランプリ2016の準決勝。
霜降り明星は準決勝のトップバッターでの登場だった。
正直、賞レースにおいてトップ出番は不利なんてものじゃない。
会場の空気も暖まっていない中で披露する漫才。
しかも、この後に数十組M-1戦士たちのネタが待ち受けており、トップ出番は記憶にも残りづらい。
どうしても客席を暖めるオープニングアクトのような扱いに見えてしまい、本戦への切符を手に入れるのは至難の業とも言える。
その時、霜降り明星がM-1準決勝という大一番で繰り広げたネタは、M-1グランプリ2018のファイナルラウンドでかけた学校のネタだった。
2年後…それがM-1グランプリを制するネタになるのだが、霜降り明星はこのとき準決勝で敗退した。
結果論だと言われるかもしれないし、後出しジャンケンみたいなことはしたくない。
だが、この2016年のM-1決勝に霜降り明星が進めなかった結果を受け、私はM-1に対して少し残念な気持ちを抱いた思い出がある。
トップバッターだから行けなかったのか…?と邪推するほどに、この時の霜降り明星の漫才は凄かった。
ウケ量やセンスだけではなく、笑いの新時代の幕開けを感じさせる『理屈にならない華』を感じたのだ。
ピカピカしていた。そう、1番しっくりくる言葉で表現するとピカピカしているように見えた。
のちに優勝するので結果オーライだが、2016年の段階で彼らを決勝に通してもよかった。
準決勝の数十組全てのネタが終わった後でさえも私は霜降り明星のことが頭の隅に引っかかる。
「あいつら、ちょっと他と違うかもな」
その日を境に、霜降り明星が少し気になる存在となった。
決勝には行けなかったし、テレビの露出もほとんどない。その頃はまだ業界関係者さえも霜降り明星を知らない人が多かった。
それから少しして…
私が担当している番組のADを飲みに連れて行った時のことだ。
いろんな話をする中で「最近、若手芸人誰が面白いですか?」と聞かれた私は、「うーん誰やろ…?あっ、そういえば、霜降り明星って知ってる?」と聞き返した。
すると、椅子から転げ落ちそうなくらい驚きの返答が、そのADから帰ってきた。
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