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ツッコミテクニック7選

お笑いの世界がツッコミ全盛時代に突入してから10年近くは経つだろうか。

ボケの引き立て役と言われることも多かったツッコミが今やお笑い界の中心にいる。
おそらく長きに渡るお笑い史の中でも、ツッコミがここまで堂々と真ん中でスポットライトを浴びた時代はなかったのではないか。

同時に漫才の形もツッコミで笑いを取ることがおなじみとなり、ツッコミ芸人が時代の寵児になりえる土台は完全に出来上がった。

ツッコミがここまでフィーチャーされるまでに至る漫才の歴史に関しては過去の記事を参照してもらいたい。

そして、今回は一言にツッコミと言っても多種多様な技や種類があり、実はどんなテクニックが駆使されていて、どのような進化を遂げてきたのか、構成作家ならではの知識と経験から、できる限りツッコミを解説してみたいと思う。

だが、その前に
ナイツ塙氏の著書「言い訳」の考察記事の中で少し触れたが、ボケの芸人がツッコミ役に回ってラクをしがちだという件についても、少し言葉足らずだったので少し言及しておく。

ボケに比べてツッコミがラクだというわけではないが、素人がすぐに真似できるのはボケよりツッコミだ。

なぜなら、ボケは天性の要素が非常に大きく、ツッコミは基本的には努力で磨くものだからだ。

そして、0から1を作り上げるのも基本はボケであり、1の笑いを無限に引き上げる役割としてツッコミは存在する。

極論を言えば
面白いものを生み出す人=ボケ
面白い人の手助けをする人=ツッコミ
だと仮定した上で
いきなりあなたがどちらかをやれと言われれば大多数の人は迷わずツッコミを選ぶだろう。

だが、ツッコミっぽい役割はできても決してツッコミはできない。

塙氏の著書の考察記事で私が記した、ボケがツッコミに逃げがちというのは、ボケの芸人がリスクを冒さずツッコミっぽい役割に終始し、人のふんどしで簡単に笑いを取ってしまう現象に対して言っているのだ。

スベる恐怖心からなのか、自分から何かを生み出そうとせず安易にツッコミ側に回るボケが最近目立つ。
あれは本当にやめたほうがいい。スベってもいいから全力でぶつかっていくべきだ。

当然のことだが、ツッコミ風を装うことは簡単だが、ツッコミは難しい。

そして今回はツッコミ技術7選とし
ツッコミの匠たちが駆使する代表的な
ツッコミテクニックを7つ紹介しようと思う。

もちろん、これに明確な正解は存在しないので筆者の完全な主観で全てを勝手に決めさせていただく。

①フレーズツッコミ 

ツッコミとは本来面白いことを言ったボケに対し、訂正したり説明することで笑いを増幅させる役目だが、今の時代はボケの役割を同時に果たすツッコミが主流だ。
笑いを取るべきボケがフリとなり、ツッコミのキラーフレーズで笑いを生む形。
言い換えれば、ボケた内容以上に見た者の印象に残すツッコミがフレーズツッコミ。
名手として千鳥ノブ氏やバイきんぐ小峠氏と説明すれば分かりやすいだろうか。
言い方の妙と絶妙なフレーズ。ネタの時だけでなく、平場のバラエティでも非常に機能するツッコミなのだ。
そして、このフレーズツッコミの最新版は、おそらく霜降り明星の粗品だろう。
せいやのボケに対し、もはや観る側も粗品がどのようなフレーズツッコミを入れてくるのかを待っている。
あの短くシャープなツッコミで笑いを量産していく霜降り明星がM-1王者になったことにより、フレーズツッコミはある種の限界到達点に達したと私は思っている。
そして、フレーズを立体的に見せる粗品の言い方も、ツッコミの歴史におけるとんでもない発明である。

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②例えツッコミ

フレーズツッコミと少し似ているが、この技術の向上こそがツッコミのポジションを引き上げた1つのキッカケと言えるだろう。
ボケやその時起こった現象を何かに例えるワードセンスで笑いを生む形だ。
MCとしてその場を回す人間には最低限求められるスキルであり、スベったボケや非常に処理しづらい状況を一撃で打開する破壊力を持つ。
さらに、トーク力に不得手な人を相手にした時、このツッコミの力は絶大な効果を発揮する。
名手としてはフットボールアワー後藤氏や南海キャンディーズ山里氏などが挙げられるが、このツッコミスキルを持つ芸人たちに共通するのはフリートークにも強いということだ。
①のフレーズツッコミ同様、笑いを自ら生み出す力が必要不可欠。
それゆえ、フリートークにも強く芸人としての地肩が強いのも特徴だ。

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③説明ツッコミ

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