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<ラグビー>2022~23シーズン、花園決勝、大学決勝、リーグワン第3節の結果から

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 最近包丁を良く使うので、我が家の包丁を研いでみた。長年の酷使によって相当刃こぼれしているが、私が研ぐとそれなりに良く切れるようになる。不思議なものだ。先日も、私が使っている大きなものを研ごうとしたら、奥様が使っている中サイズと小サイズのものを研いでくれと頼まれた。一本のつもりが三本になったので、リューマチの右手薬指は直角に曲がってしまい、直すための激痛(つまり指の脱臼を戻すようなもの)に耐えることとなったが、それでも仕事をした成果が出るのがちょっと嬉しい。

1.花園決勝の結果

報徳学園23-32東福岡

 もっと競った試合になると期待したが、ここは経験値に優る東福岡の完勝だった。キックオフ早々に報徳のタッチキックをチャージして、そこからあっさりとトライ。さらに、ブレイクダウンを乗り越えるターンオーバーを連発した他、報徳のラインアウトを読み切って、相手ボールをスティールする。やることなすこと全て東福岡ペースになって、12分までに12-0と東福岡がリード。

 それでも、22分に報徳がNO.8の献身的なキックチャージからトライを返して、7-12と前半を終えたのは、報徳の意地だったと思う。そして、後半ブレイクダウンとラインアウトを修正できれば、逆転の可能性ありとの期待もあった。

 しかし、後半1分に報徳がPGを返して10-12とするのが精一杯だった。その後は、東福岡のブレイクダウンとラインアウトの優勢は変わらず、さらに個々のランナーが走りきってトライを重ねる。報徳にも数回チャンスがあったが、緊張感からか肝心のところでノッコンやパスミスをして、トライを取り切れない。最後は、東福岡NO.8がディフェンス3人をぶっ飛ばすトライや、11番のハットトリックなど、お祭り状態で優勝を決めた。

 こうしてみれば、「報徳の三冠」という前触れはあったものの、選抜で決勝をやっていれば東福岡が勝ったのだと思うし、セヴンズと15人制は別物だから、順当な結果なのだと思う。考えてみれば、東福岡に良く迫ったのは準々決勝の佐賀工業で、ここを乗り切ったことで東福岡はチーム力が強化されたように思う。

 というわけで、今年の花園ベストゲームは、準々決勝の東福岡対佐賀工業だった。これに続くのは、準決勝の報徳学園対天理、または準々決勝の報徳学園対東海大大阪仰星ではないか。

2.大学決勝の結果

 やはり、心配したとおりにミスマッチの悲惨なゲームになってしまった。したがって、今シーズンの大学で楽しませてもらったのは、東洋大と京都産業大の二校だった。そして、帝京は素晴らしいチームを作り上げた。岩出前監督と相馬監督の手腕を称えたい。

帝京73-20早稲田

 試合開始早々に帝京があっさりとトライを取ってしまう。これで、帝京は「組み易し」と判断したのか、スウィッチを切ってやや流すようなプレーになる。そこを早稲田はさすがに突いて、16分までに連続してトライを挙げ、7-12と逆転する。早稲田はこの時点で十分勝てると過信した一方、帝京はここで目が覚めて本来の実力を如何なく発揮しだす。ここから「エンジンがかかった」のだ。それでも前半は28-12で、まだ早稲田にも逆転する期待は残っていた。

 しかし、後半41分、早稲田がPKからアタックせずにPGを刻んで、28-15としたことは、もう早稲田に勝ち目はないと自分たちで認めることとなってしまった。その後帝京は、スクラムをことごとく圧倒する一方、ブレイクダウンでも楽々とボールを継続して、まるでアタック練習のようにトライの山を重ねる。時折ミスをしても、それが致命傷にならないくらいに早稲田との力の差は拡がっていき、74分の時点で66-15とゲームは崩壊してしまった。

 その後78分に、選手交代した帝京のゴール前の甘い詰めを突いて、早稲田がインターセプトからトライを返したものの、焼け石に水以下の慰めにもならないトライとなった。そして、インターセプトされたリベンジに燃える帝京は、79分にいとも簡単にトライを返し、73-20という、大学選手権史上最多得点、最多得点差、最多トライを記録して、優勝に華を添えた。

 個々の選手では、帝京の2番、6番、7番、9番、10番、15番が良かった。一方の早稲田は2番が良く奮闘していた。なお、早稲田の10番はディフェンスが弱いので、来年以降も先発SOをやるのなら、もっとタックル練習をした方が良いと思う。

 予想通りに帝京が圧勝した決勝戦となったが、帝京と他校との実力差がここまで離れてしまったのは、帝京が良く頑張った成果というよりも、他校がだらしない、特に伝統校がもっと改善すべきところをできなかった結果と言いたい。それは、選手のリクルートではなく、良いコーチングの成果に尽きる。大学ラグビーは、もう野球のようなレベルになっているのだから、これからの日本のラグビー界は、いつまでも早慶明の伝統校がどうのという旧弊を乗り越える時期になっていることを、協会もファンも自覚すべきなのではないだろうか。

その第一歩は、優れた高校生は皆、プロ野球のように、リーグワンのチームに入るべきなのだ。またそうなった場合は、プロ野球のようなドラフト制度を導入することも必要になるかも知れない。

3.リーグワン第3節の結果

埼玉ワイルドナイツ40-5相模原ダイナボアーズ

 シーズン開幕2連勝と好調のダイナボアーズの健闘を期待したが、イギリス人SOジェイムズ・シルコックが普通のレベルで、彼を使うくらいなら、日本人SOの方がよっぽどマシではないかという出来だった。対するワイルドナイツは、先発が山沢拓也、リザーブが松田力也と二人ともに日本代表ということで、プレーのレベルが違っていた。

 試合自体としては、前半は両チームともにイージーミスが多くてしまらなかったが、時間の経過とともにワイルドナイツが良くなっていくのに対し、ダイナボアーズは修正できなかった。それでも後半61分にワイルドナイツ12番ダミアン・デアレンデがレッドカードになって、ダイナボアーズに得点チャンスが来たが、数的有利の時間に1トライを返すのが精一杯だった。

 ワイルドナイツの3列、特にMOMになった7番大西樹は毎試合感じるがかなり良い選手だと思う。日本代表に是非入れたい。また、6番福井翔太は大学に行かずにワイルドナイツに入ることによって、もう日本代表クラスに成長してくれた。その賢い選択を称賛したい。

東京サンゴリアス32-23横浜イーグルス

 前半18分に、サンゴリアスSOアーロン・クルーデンが危険なラックのプレーでレッドカードになり、サンゴリアスは数的不利な状態で残り62分を戦うことになった。さらに、イーグルスSHファフ・デクラークは、南アフリカやフランスでは絶対にできない自分勝手なプレーをしていたが、これに良く他のチームメートがついていって、一時は23-25まで迫ったのは立派だった。しかし、ファフ・デクラークは、前半36分にシンビンになった上に、後半も、普通ならPKを取られてもおかしくない相手ボールスクラムからの相手SHへのチャージを連発していて、これは日本だから許容されているように見えた。今後のレフェリングを注視したい。

 最後にサンゴリアスは、FWの奮闘によって9点差の勝利を得たが、この苦しい試合を勝利で乗り越えられたことで、サンゴリアスは出だしのつまずきを修正できたかも知れない。

ブレイブルーパス東京29-16静岡ブルーレヴズ

 ブレイブルーパスが順当に勝利した試合。FWではマイケル・リーチ、BKではジョナ・ナイカブラが活躍した。TVでは、盛んにブルーレヴズの南アフリカ人傭兵クワッガ・スミスとリーチとのマッチアップを煽っていたが、スミスはもともとセヴンズの選手で、スプリングボクスでの居場所は少ない選手だ。だから、リーチとは戦う土俵が違うと思う。

 そのブルーレヴズだが、TVで怪我人が多い云々とチームの人材不足を強調していた。しかし、このチームは母体のヤマハ時代から、早稲田OBの清宮-堀川体制により、(大昔の早稲田のように)無名選手を代表クラスまで育成して強豪チームを作り上げるというのが、一番の「売り」だったのではないか。また、そうしたメソッドを実現できる「早稲田ラグビー」を具現するチームとして常にマスコミは持ち上げていたのを、もう忘れたのだろうか。

 そうはいっても、ヤマハはかつてオールブラックスのジェリー・コリンズで大失敗したこともあるが、外人傭兵抜きでは戦えないので、クワッガ・スミスのような15人制ではあまり注目されない選手を入れることで、チーム力をアップさせている。そして、この試合もスミスはチームが劣勢な中で孤軍奮闘していたが、奮闘するあまり、後半55分にスピアータックルをしてシンビンになってしまった。TMOとレフェリーで協議した結果シンビンになったのだが、TV映像から見ると、スミスはボールを持たない相手の足を持ち上げて逆さにし、さらにグランドに叩きつけるように上半身を落としている。これは、テストマッチであれば、レッドカードになって当然の危険な反則なので、この後どうなるかわからないが、出場停止処分を科せられるのではないか。

 一方のブレイブルーパスは、SOトム・テイラーがチームになじんできているように思う。リッチー・モウンガの加入で居場所がなくなりそうだが、彼はもともとブルーレヴズのSOとは大違いの、トップクラスのゴールキッカーなので、ブレイブルーパス以外でも採用したいチーム(特にブルーレヴズ?)がありそうだ。私は、ラグビーで勝つためにはSOが一番重要だと考えているが、このSOが安定すれば、FWにリーチはもちろんのこと、LOワーナー・ディアンズなどの良い選手がそろっているし、BKもナイカブラや濱田将輝というスピードのあるトライゲッターがいるので、ブレイブルーパスは優勝争いに絡めるのではないか。

花園近鉄ライナーズ12-77スピアーズ船橋・東京ベイ

 前半21分にスピアーズにシンビンが出るが、ライナーズは数的優位を生かせない。それでも、13番シオサイア・フィフィタがタックルで奮闘するが(まさに「壊し屋=ボーンクラッシャー!」)、個々の選手の上手さの違いとチームとしての熟成度に大きな差があった。さらにFW戦でスピアーズが常に優勢なら、どうやっても負ける要素はなく、結果大量点に結びついてしまった。ライナーズには申し訳ないが、ミスマッチというしかない。クエード・クーパーの早期復帰を期待したい。

グリーンロケッツ東葛33-43神戸スティーラーズ

 スティーラーズは、前半を12-31とリードして終えるが、後半49分と52分に続けてシンビンを出す。その数的劣勢の間に2トライを取られるも、1トライを返して、26-36の10点差を維持する。その後、両チームともさらに1トライずつ取り合ったが、結局10点差のまま終わった。

 グリーンロケッツにとっては、やはり実力的に劣るので、この点差の敗戦は許容範囲だが、スティーラーズは優勝候補にも挙げられるチームながら、この内容はいただけないものだろう。なにか、かつてのスキのなかった良いチームが、まったく別の普通のチームになっている。これを修正するのはかなり難しそうだ。世界一の名コーチであるウェイン・スミスに、早く来てもらうしかないようだ。

トヨタヴェルブリッツ25-29ブラックラムズ東京

 最後まで得点が競って、けっこう楽しめたゲーム。それよりも、ヴェルブリッツがホームジャージ、ブラックラムズがセカンドジャージなのだろうが、前者は濃いグリーン、後者は濃いグレーで、遠目には区別がつきにくかった。ここは、ヴェルブリッツがホームであるものの、セカンドジャージの白を起用すべきだったと思う。

 ヴェルブリッツは、9番、12番、そして軽いプレーと相半ばしていた15番がプレーの要だった一方、ブラックラムズはMOMになった7番が奮闘していたが、勝利を得た要因はチーム全員の結束力だったと思う。特に79分に、ヴェルブリッツにゴール前モールからインゴールに入られたが、タッチダウンさせずにノッコンさせたプレーは、チームとしての意地が見えたプレーだった。


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