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<ラグビー>東京オリンピックセブンズ,日本代表の結果から。そして、リーグワン

ラグビーの専門家でもコーチでもない私が,偉そうに敗因の分析とかパリオリンピックに向けての改善点の指摘とか,そんな評論家のようなことは,とてもおこがましくてできない。でも,素人なりに,また40年以上ラグビーを見てきたファンとして,少しは思うところがあるので,それを書かせていただく。

1.男女共通すること

(1)新型コロナウイルス感染により,オリンピックまでの実戦の機会が限られてしまった。それは,国際大会のみならず国内においても,練習時間を含めて厳しく限定されたため,単純に練習と準備が不足していた。

(2)高温多湿という,日本の夏特有の条件をアドバンテージにできなかった。7分間ハーフという短い試合時間のため,40分間ハーフの15人制に比べれば,高温多湿によるフィットネスへのダメージが現れる時間自体は少ないものの,15人制よりフィットネスに与える強度はかなり高いので,もっと日本の夏という環境をアドバンテージにするための,創意工夫を重ねた練習をしても良かったのではないか。

2.女子に思うこと

(1)体格差のハンデをそのまま点差にされたこと
 そもそも,女子は世界トップレベルとの体格差=フィジカルの差が著しい。今回,躍進した中国やフィジーは,こうしたフィジカルの差が少ない中でスキルを磨いた結果が反映されたと思う。例えて言えば,1980~90年代の男子15人制代表のように,スキル以前のフィジカルコンテストで歯が立たないため,パスやランニングのスキルを競うような「ラグビー」をプレーする以前に,物理的に負けていたように思う。

 しかし,少子化の現在,フィジカルに勝る女子選手をラグビーに引っ張り込むのは,簡単なことではない。また,才能ある選手は,フィジカルバトルを気にしないで済む,サッカー,バレーボール,バスケットボールなどへ流れてしまうから,かなり厳しいリクルート環境に止まっている。これに対する良い打開策はないものだろうか。

(2)自分たちの強みを持てなかったこと
 では,フィジカルで勝負できないのであれば,フィジカルコンテストを避けたゲームプランを練って,これを完結することがチーム戦略として求められると思う。そして,今回そうした戦略・戦術を持っていたかといえば,不十分だったのではないか。

 15人制でも弱点になっているが,女子はキックとキック処理が不得手だ。特にセブンズでは,マイボールのキックオフをキープするかどうかで,得点チャンスが大きく違ってくる。的確なキックと高いジャンプ力によるマイボールキャッチができる選手の養成が必須だと思う。

 次に,フィジカル勝負ができないのだから,自ずとパスとラン能力を磨くしかない。ロングパスはインターセプトされやすいから,短く速いパスを,優れたフィットネスで粘り強くつなぐようなプレーが,日本女子には合っているのではないか。もちろん,ノッコンなどのミスをしたら致命傷になってしまうので,ミスは絶対にしない短く速いパス回しを磨くことが重要だ。

 そして,個々のランニングスキルである。1対1なら確実にトライまで持って行けるぐらいの,スピードとステップを磨きたい。また,タックルされても,オフロードパスを左右に出せるくらいのボールキャリアーの身体の強さと、左右に複数のサポートが常に付いている体制を築きたい。

 最後はタックルとブレイクダウンだ。どちらもフィジカル勝負そのものだが,タックルは人数の多さと一人の選手が何度も繰り返す執拗さでフィジカルの差を埋め,ブレイクダウンは,捨てるものと奪いにいくものの見極めを磨きたい。

(3)経験値が圧倒的に低かったこと
 セブンズは,高いフィットネスを必要とするため,自ずと若手が中心になる。しかし,15人制同様に経験値の差が結果に直結する。そして,この経験値は練習では絶対に得られず,試合,しかもハイレベルの試合を重ねることでしか得られない。昨年・今年は,新型コロナウイルスという不可抗力によって実戦経験を積めなかったことが大きく影響したが,これからは機会が許す限り,海外遠征して実戦経験=経験値を積むことが必要だろう。

3.男子に思うこと

(1)日本独自の創意工夫がなく,一般的なプレーで戦ったこと
 男子も女子同様に,他の強豪国と同じようなプレーをしていたら,フィジカルと経験値の差をそのまま得点差にされてしまうだけになる。だから,日本独自の創意工夫を考えて,15人制が世界から注目されているように,日本のセブンズ独自のプレーを創出して磨きたい。

 その一つとして,15人制では普通になっているキックパスを,セブンズでも有効に使えないだろうか。これが通れば,フィジカル勝負ではなく単純なキックとキックキャッチのスキル,それからスピード勝負になるので,日本代表が勝てる可能性が高まるように思う。

(2)ベストの選手を代表にできなかったこと
オリンピックで戦った選手たちには大変に申し訳ないが,もし可能なら,姫野和樹,箸本龍雅,福岡堅樹,松島幸太朗,高橋汰地,竹山晃輝,山沢拓也,梶村祐介,中野将伍, 中村亮土,茂野海人,流大の各選手で代表チームを作って欲しかった。

15人制で活躍する選手がそのままセブンズで活躍できるわけではないが,女子同様に人材に限りのあるラグビー界では,15人制の優秀な選手からセブンズ代表を選出できるように,日頃からセブンズのプレーをシーズンに組み込むことが必要なのではないか。

そういう観点からは,既に形骸化している日本選手権をセブンズに特化した大会にするとともに,高校も冬の花園と春のセブンズという形で,全国大会を形成したい。

(3)絶対的エースの不在
 歴史に残るような結果を出した代表チームには,常に絶対的エースがいる。今回の選手たちを批判するつもりはないが,この絶対的エースとしての,常にボールを持たせたい選手がいなかったと思う。

 また,世界の中でも弱小チームに入る日本としては,平均点の選手を7人揃えるよりは,ボールを持ったらなにがなんでもトライまで持って行く,タックルさせたら相手を退場させるほど強烈,サポートプレーなら無制限に疲れ知らずといった,一芸に秀でた選手を集めた方が良かったように思う。

 そして,その中でトライを取り切れる絶対的エースがいれば,相手のマークを集めることもできるし,マークが薄ければボールを集中させることもできたと思う。こういう選手がセブンズにいて欲しかった。

4.そして、リーグワン

 せっかくのホームで開催されたオリンピックであったが、男子・女子ともに惨敗した。その一方、15人制は、トップリーグとサンウルヴズによる錬磨の成果として、2019年RWCベスト8入りという素晴らしい結果を残した。そして、トップリーグが発展的解消され、2022年1~5月の間、よりプロ化したものとしてのリーグワン(正式には、ジャパンラグビーリーグワン)が始まる。

 リーグワンには、何よりも選手よりチームとしてのプロ化が求められている。しかし、一部の守旧派(そのまま大学ラグビー信望者)といえる人たちから、ディビジョン分けに際して前年度の成績を考慮していないというクレームがあったが(ちなみにNECに対するものと思われる)、これはチームとしてのプロ化を判断基準にしていることを見逃していると言わざるを得ない。たまたま1シーズンの成績が良かった・悪かったのみを反映させた場合、結果的にチームとしてプロ化が進行していないチームが上位のディビジョンに入れば、リーグワンを立ち上げた意味がなくなってしまうだろう。だから、今回の組み分け結果は正当なものと考える。

 なお、この組み分け結果云々に深く立ち入ることが本論の趣旨ではないので、この問題については、これ以上深入りしない。ただ、日本ラグビーの更なる発展を祈るばかりである。

 一方、リーグワンに私が期待していることは、その5ヶ月間という世界的に見て非常に短いシーズンで終えてしまうことの活用法だ。もちろん、その他の期間は日本代表の練習や試合に宛てるためという理由になっている。しかし、当然のことながら、日本代表スコッドに入るのは、せいぜい50人程度の選手でしかなく、他の選手には単なるオフシーズンにしてしまうのは、非常にもったいない。

 では、何に有効活用すれば良いのか?
 私の結論は、セブンズにつきる。リーグワンのシーズンオフには、是非セブンズのゲームを開催して欲しい。たとえば、ディビジョン1の12チームが持ち回りで、毎週12週間にわたって、12チーム参加の2日で終わるセブンズ大会を開催して欲しい。セブンズなら参加人数は少ないので、開催に係る経費や手間はかなり縮減できるはずだ。
 
 大会フォーマットは、12チームを3チームずつ4グループに分ける。グループ内は総当たりとして、初日に予選を行う。2日目は、各グループ上位2チームの計8チームによるトーナメントを行う。各グループ最下位チームも9~12位争いのトーナメントを行う。これは、セブンズワールドシリーズに準拠したフォーマットだ。

 これを12週間=3ヶ月開催するだけで、日本のセブンズの試合数は飛躍的に増加する。そして、15人制代表から外れた選手たち、特に若手選手たちにとっては、自分の能力をアピールする良いチャンスになる。さらに、ここからセブンズの能力に秀でた選手が多く発掘されるチャンスにもなると思う。

 このセブンズについては、名称を「ジャパンラグビーセブンズ」として、真剣に開催を考えるべきと、私は強く思っている。そして、これが2024年パリオリンピックで、セブンズ男子日本代表が活躍できる土台になるのではないかと提言したい。

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