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<旅行記>「トゥクトゥク」と恐竜スナック、そしてスイスアーミーナイフ

1.トゥクトゥク

今年の初夏の頃,「美味しいパッタイが食べたい」と,奥様が言って,調べたら,いつも利用するタイ料理店の他に,もう一軒「トゥクトゥク」という店があるので,行ってみた。

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トゥクトゥクという言葉は,タイ旅行した人なら誰でも知っているだろうが,街中でよく見かける3輪タクシーのことだ。店の看板もこの3輪タクシーである「トゥクトゥク」を使っている。

店自体は,タイから輸入した仏像を飾ったテラス席があり,籐で出来た椅子もあって,かなりタイのイメージを意識している。気温も暖かくなり,外気に触れるテラス席が心地よい季節になったので,その仏像を眺められるテラス席に座った。

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せっかくタイレストランに来たのだからと,タイビールはないかと思って聞いたが,メニューにはあっても現物は入っていないようで,新型コロナウイルスによる流通障害や,この頃発生したスエズ運河の座礁事故も影響しているようだった。早く普通の流通機構というか,普通の経済に戻って欲しいものだ。まあ,タイビールが飲みたいからだけではないが...。

そうして,しばらくしてからビールを持ってきた,いかにも学生アルバイトという雰囲気の朗らかな笑顔を見せる青年が,私の顔を見て,親しげに話しかけてきた。もちろん,私たちがアジア系だとわかっているので,ルーマニア語ではなく英語を使ってくれる。

「自分の大好きな映画で,「ベストキッド」という空手(カンフー)映画があるのですが,ここに出ている俳優にあなたは似ていますね!」と,とても嬉しそうに話してくる。このとき,私は自分の顎髭(老人なので,大半が白くなっている)をかなり伸ばしていて,まるで仙人みたいなイメージになっていた。

後で調べてみたら,この「ベストキッド(またはカラテキッド)」の空手の師匠をする俳優は,パット盛田という日系人のそれなりに売れた俳優で,特にこの作品のときは,空手の師匠に相応しく,白い顎髭を生やしていた。ついでに言うと,今の私同様に頭は禿げ上がっている部分が多くなって,髭と相まって正に老人そのものになっている。

青年がそう話した後,一瞬私は,よく理解できなかったのだが,青年はさらに楽しそうに話し続けた。
「この映画に出てくる日本人の俳優が,あなたみたいな髭を生やしているのですよ。それで,あなたを見て思い出しました」と言われて,私は改めて自分の顎髭を触ってみた。たしかに,空手の師匠みたいな雰囲気になっているかも知れない,と思った。

さらに青年は楽しそうに話を続けた。
「自分もあの俳優みたいに顎髭を伸ばしたかったのですが,(と言って,自分のつるつるした若々しい顎をなでて)若いせいか,髭は伸びないので,あなたがうらやましいです」と私の顔をみて,余計にニコニコしている。

私は,英語の会話がちょっとうっとうしくなってきたので,「サンキュー(髭へのお礼と,「もういいよ」の両方を含めて)」と笑顔で返したら,理解してくれたのか,青年はキッチンへと引っ込んだ。

しばらくして,奥様が注文した,チキンとビーフのサテー(ピーナッツソースが付いた焼き肉の串),パッタイ(タイ風焼きそば),ヤムウンセン(ゆでエビが入った,ビーフン(ウンセン),レモングラース(レモン風味の香草),ピーナッツ,パクチ(コリアンダー),モヤシなどが入ったサラダ)が来た。

冷えたビール,そして初夏の空気とともに,タイの味を楽しめた。私たちが,東南アジアにいた頃を思い出したように,あのサーブしてきた青年も,今日家に帰ってから,「ベストキッド」のDVD(むしろYoutubeか?)を探すのだろうか。


2.恐竜スナック

奥様が,デザインが面白いからと,恐竜の形になっているスナックを買ってきた。2種類あって,一つはティラノザウルス,もう一つはブラキオサウルス。意外と形態を忠実に再現している。

20210605恐竜スナック1

20210605恐竜スナック2

食べてみると,軽い塩味で,材料はコーンだろうか,少し風味が感じられる。一応,BIOと言う無農薬かつ自然食品が売りもののスーパーの商品なので,健康的なイメージが感じられる。

考えてみれば,日本では昔からこうしたキャラクター商品は多くあったし,特に駄菓子屋で良く買ったな,と遠い昔を思い出した。

日本の(今もそうだけど),昭和時代と,21世紀の自然食品の考えていることとは,どこか共通しているのかも知れない。もっとも,昭和のスナックは,単純に子供の目に触れたいということが目的なのに対して,自然食品は恐竜のように絶滅しないために気を付けましょうということだろうが,出てきた結果が同じというのに,人間の考えることの不思議さを思ってしまう。

そうそう,パット盛田と私の写真を比較してみたら,髭以外はまったく似ていなかった。


3.スイスアーミーナイフ

先日,もう35年近く前に職場の先輩からもらった,小さなスイスアーミーナイスを亡くしたことを記事にした。しかし,自分としては諦めきれず,またその小さな爪切りが非常に重宝だったので,通信販売で購入することにした。ルーマニアの金で123レイ=約3,000円だった。

亡くしたものと同じデザイン―基本の赤一色―を買う選択もあったが,ネットのサンプルを見ていたら,違うものを買う気分になった。また,爪切りやその他の器具の形が,亡くしたものとマイナーチェンジしていることも理由となった。

その購入したのが,この模様。

20211019スイスアーミーナイフ


奥様からは,「おじさんが,花柄を買うの?」と言われたが,ちょっと歴史・神話・美術に興味がある方なら,気付くと思うのだが,この白地に青い花・葉・枝の絡まっている文様は,古代ギリシア遺跡にある絵画に似ている。そもそも白地に青は,ギリシアのエーゲ海を反映したものだし,花・葉・枝の文様はギリシアの壷絵によく描かれている。

つまり,現代的なお洒落な文様ではなく,古代ギリシア美術をレスペクトしたものだと思っている。そのため,これを使う度に,僕の心はエーゲ海とアクロポリスの空想に包まれていく。それはしばしの至福の時でもある。


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