見出し画像

<閑話休題>もしも日本が熱帯地域になったら

 今や、日本の夏は熱帯地方のようである。気温だけではない。スコールがある。台風の規模は大きく強くなった。米や魚などを含めた動植物の居場所が変化している。夏の期間も長くなっている。

 ところで私は、マレーシア、バングラデシュ、インド、マイアミの熱帯または亜熱帯地方に住んだ経験がある。これらの地方では、日本の夏が最近経験しているような気候を、数年を通して体験してきた。正確に言えば、これらの地域には、雨期・乾期・モンスーン期・一時的に低温になる時期などの異なる季節はあるのだが、日本人にしてみれば、ただ「暑い夏が毎日続く単調な気候で、夕方には必ずスコールがある」という印象が強い。実際、細かい気候変動によほど気を付けていない限りは、季節感を得られるようなものは、クリスマスや新年などの行事以外は皆無に近い。

 一方、最近の日本の夏も熱帯地方のような気候になっており、また夏が長くなっているので、これからは熱帯のような生活仕様にしなければならないのではないか、と考えた次第。そして、その熱帯仕様とはどういうものかと言えば、こんな感じだろう。

1.シエスタ(昼寝)の習慣
 毎日ランチの後は、日が陰ってくる16時までは、シエスタ(昼寝)の時間として、公共施設を含めて、皆仕事を休んで昼寝をする。その間、さまざまな業務が停止するが、それは織り込み済みとして生活のリズムを変えるのだ。もちろん、病院・警察・消防などは例外だ。

2.服装の簡素化
 涼しく乾燥しているヨーロッパ仕様の、首を絞める暑苦しいネクタイや長袖シャツ、そしてスーツはフォーマルで特別な機会だけに着るものとなる。男性の普段着は、ポロシャツと短パンで十分だ。女性もこれに準じる服装で良い。衣料品メーカーは困るかも知れないが、冬服の需要がなくなるわけではないし、海外旅行すればこれ以外の服も必要になるから、業務への大きな影響はないだろう。実際、暑いマレーシアのデパートに、厚手のコートが沢山販売されている光景を見たことがある。マレーシアでは着ることは絶対にないが、海外旅行したときに必要となるので、冬服には一種のスノッブ趣味があったのだろう。

オラウータンの子供

3.学校の二部制
 1.のシエスタに加えて、暑い中で勉強するのは集中が続かないから、公立学校は午前と夕方の二部制にする。その間の子供たちの居場所がないということになるから、交代制で見守り役の教師を配置して、シエスタの時間帯に学校を開放すれば良い。そこで子供たちは、シエスタをとっても良いし、または学年を越えた小規模グループによる交流を持ち、年上は年下の面倒を見て、年下は年上から社会勉強をすれば、子供たちには楽しい時間になると思う。

4.在宅勤務の恒常化
 都市が暑いのは、人が多い(体温からの放射熱で加熱される)からで、また、エアコンの室外機が出す放射熱がさらに街を暑くしていることにも原因がある。だから、在宅勤務を恒常化すれば、こうした問題はかなりの部分で解決する。一方で、都市部のビルなどの新規建築を制限して広い土地を作り、そこに熱帯植物を植える。例えば、ココナツ、ナツメヤシ、マンゴー、ランブータン、バナナ、オリーブなどの実用価値のある植物が良い。そうすれば、街のヒートアップは植物の二酸化炭素吸収によって抑えられ、方々に涼しい木陰が出来て、万一のときの食料も確保できる。いいことずくめではないか。

<私が、アマゾンのキンドル及び紙バージョンで販売している、世界各国の都市についてのエッセイです。宜しくお願いします。>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?