今回のプログラムについて⑨

「作品の関連付けについて」

プログラムを組む時に、必ず全体のバランスを見て、またわずかでも繋がりのある並びにするように心がけています。
今回のプログラムは、意図と偶然が上手く混ざった選曲になったので、それを説明します。

まず、前半と後半で分けます。
前半は、2人とも古典派の作曲家で、しかもソナチネアルバムでもおなじみで、それぞれのソナタを選びました。
後半は、2人ともキリスト教に深い関係のある作曲家で、作品もキリスト教を題材にしたものを選びました。
実は調性は、前半が短調、後半が長調になっています。
メシアンは以前書いた通り、「移調の限られた旋法」を使っていますが、今回演奏する〈聖母のまなざし〉と〈幼子イエスの口づけ〉では、かなり長調寄りの使い方です。
このように、前半と後半それぞれにおいて、共通点があるように配置しました。

次に、前半と後半それぞれについて見てみます。
前半のハイドンのソナタはロ短調、ドゥシークのソナタはヘ短調で、三全音の関係になっていて、最も遠い調と言えます。
古典派ソナタを並べた時、作曲家や書法の違いはあれど、聴く側に劇的な違いとして捉えにくいと思い、調性の力を借りて全く違う響きを演出しやすくなるようにしました。
後半のメシアンとリストについては、そもそも異なる響きなので、作品の力をそのまま利用させてもらいました。
このように、前半と後半のそれぞれの中で、2人の作品の対比をなすように選曲しました。

そして、前半のメインのドゥシーク、後半のメインのリストに共通点があります。
リストは「リサイタル」の創始者で、共演者なしでピアノの独奏のみでコンサートをしたのはリストが最初です。
実は、ドゥシークは、観客に自分の横顔が見えるように、ピアノを配置した最初の人です。
つまり、現在当たり前になっている、ステージ上にピアノを横向きに配置することを始めたのがドゥシークなのです。
この2人がいたから、現在、僕を含めあらゆるピアニストが、あのピアノの配置で独奏のみのコンサートができるのです。
2人ともピアニストとして活動していたからこそ、新しく考案できたスタイルだと思います。
そのような作曲家の作品ですので、前半後半それぞれのメインにふさわしい、演奏効果の高いものになっています。

以上のように、いろいろな仕掛けが今回のプログラムには隠れていたのです。
おそらく誰も気付いていないでしょう。
今まで気付かれていなかったことを願います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?